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【大学野球】秋山翔吾の“能力”を継ぐドラフト候補左腕、八戸学院大・高橋優貴

 

努力できる天才


2018年のドラフト候補左腕・高橋は、西武・秋山が八戸大時代(現八戸学院大)にスイングを行った「ミーティングルーム」でシャドーピッチングに力を入れている


 青森県八戸市美保野にある八戸学院大野球部合宿所「飛天寮」。二階に上がると“伝説の練習場”がある。「ミーティングルーム」と表示された上部には、西武・秋山翔吾楽天塩見貴洋ヤクルト田代将太郎(2017年まで西武)の名前が刻まれている。OB3人の寄贈により12年、傷みが激しかった畳張りの床を、板の間に改修している。

 14年12月に室内練習場が完成するまで、八戸学院大の系列校である八戸学院光星高を含めて、冬場の練習場確保には苦労した。雪のため、グラウンドは使えず、2月は昼間でも0度近い極寒の地である。秋山は07〜10年に在籍(当時・八戸大)。厳しい状況の中でも工夫して、技術を高めていったその先に、プロがあった。

 かつて、消灯23時を過ぎると毎晩、暗闇のミーティングルームで一人黙々とバットを振る部員がいた。それが、秋山だった。のちにNPBを代表するヒットメーカーが自身と向き合った足下は、特に畳が擦り切れていたとされる。

 大学を卒業してすでに7年が経過したが、「秋山部屋」での猛練習は、現役部員の間で語り草となっている。そして、レベルアップを目指す上で、後輩たちの大きな励みだ。18年、ドラフト上位候補にリストアップされている152キロ左腕・高橋優貴(4年・東海大菅生高)も、先輩からの伝統をしっかりと受け継いでいる。

「今は合宿所と室内練習場が隣接しており、環境に恵まれています。地道な努力の大事さ。秋山さんの姿勢を見習っていきたいです」

 高橋はタオルを左手にし、シャドーピッチングが夜の日課だ。鏡はないため、窓越しに映る自身の姿を見て、フォームを細かくチェックしている。

 八戸学院大は03年秋を最後に、北東北大学リーグ戦の優勝から遠ざかっている。04年春から昨秋まで富士大が8連覇中。つまり、高橋は在学3年間でV経験がない。富士大のエースは同じ左腕・鈴木翔天(4年・向上高)。

「もちろん、意識します。リーグ戦の試合でも、ドラフトの話でもライバルになる」

 だが、個人的な思いは心に秘めており「何としても優勝して、皆で神宮(6月の全日本大学選手権)へ行く。全国優勝して、トップに立ちたい」と決意を語る。その上で「神宮に出られれば、プロも近づいてくると思う。左では一番と言われるようになりたい」と、副主将はチームのために腕を振ることを固く誓う。

「人よりも練習をしないと、トップに立つことはできない」

 高橋には先輩・秋山を継ぐポテンシャルがある。

「努力できる天才」

 今晩も夕食後、タオルを鋭く振り抜く引き締まった音が、ミーティングルームを支配しているに違いない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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