今季、日本ハムから中日に加入した大野奨太。竜の正捕手番号である27を背負い定位置争いを盛り上げている新戦力は、初めて過ごす中日の春季キャンプ中、絶えず視線を動かして細部まで観察を怠らなかった。

　例えばブルペンでは自分が受けている投手はもちろん、左右で投げている投手の様子もチェック。「僕、人を見るのが好きなんですよ。『今日はあまり良さそうな表情をしていないな』とか、『悔しがってるのかな。悔しがっていたらどんなボールを投げるのかな』とか」。ちょっとした表情やしぐさから性格を読み取り、試合の要所でかける言葉を選び、投手の力を引き出せるように努めている。

　いかにもキャッチャーらしい洞察力。「職業病」と苦笑するクセは、日常生活でも現われる。

「人を見ることは無意識になっています。普通に道路を歩いていてもつい通行する人に目が行ってしまいます。『何を買が得ているんだろう』とか『良い生き方をしてるのかな』とか。そうやって見る習慣ができていますね」

「ムダなことはムダではない」をモットーとする大野奨。ささいな気付きでも少しずつ積み重ねることで、5年連続Bクラスに沈むチームに変化をもたらすつもりだ。

文＝吉見淳司 写真＝BBM