週刊ベースボールONLINE

編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

松坂の師匠・東尾が尊敬する投手のように

 


 スライダー、シュートなどを精緻なコントロールで操り、通算251勝を挙げた東尾修(元西武)が尊敬する投手は鈴木啓示だと言う。「草魂」を座右の銘とし、近鉄の大エースとして20年間投げ続けた左腕。通算317勝は小山正明(元阪神ほか)の320勝に次ぐ、歴代4位の記録になっている。

 しかし当然、すべてが順風満帆な野球人生だったわけではない。速球を軸にプロ2年目から5年連続で20勝以上をマークしたが、それだけでは通用しなくなり、7年目以降は以前のように勝ち星が伸びなくなる。試行錯誤の果てに、鈴木は技巧派への転身を果たして輝きを取り戻し、300勝へと突き進んでいった。

「あれだけ速い球を投げていた人が、見事に投球スタイルをチェンジして、300勝以上を挙げた。速球派が技巧派になることはなかなか難しい。それをやり遂げたから、すごく尊敬できる」

 鈴木は“身の丈を知っていた”ということなのだろう。ありのままの己を受け入れ、生き残るために本来のスタイルを捨てていく。とはいえ、新しい自分を確立していくのは口で言うほど簡単なことではない。

 西武入団時の監督であった東尾を師匠と呼んで差支えない松坂大輔(中日)。レッドソックス時代の2011年、トミー・ジョン手術を受けたが、手術後、初めて報道陣の前に姿を現したとき、地元メディアに「松坂の時代は終わった」と厳しい記事を書かれたことを受け、「ある意味、今日からが新しい松坂になるためのスタートだと思って、マイナスから新しいものをつくっていきたい」と述べていた。

 しかし、再スタートの道は険しかった。メジャーで以前のように勝てなくなり、15年にソフトバンク入団も昨年までの3年間で一軍登板はわずかに1。その唯一の登板も1回5失点と散々。“新しい松坂”をなかなかマウンドで表現することができなかった。

 そして、今年。新しく中日のユニフォームを着て、ここまで順調な調整が伝えられている。鈴木のように、新スタイルで勝利を呼び込める投手となれるか。背番号99の生き様を見届けたい。

文=小林光男 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング