春季キャンプでは充実の時を過ごし、オープン戦でも好調をキープするバレンティン
「オープンセン、ノーマネー」。オープン戦で活躍しても金にならないよ、とうそぶくが、好調さは隠しようがない。3月4日の
巨人戦(東京ドーム)では
山口俊の外角高めの直球をとらえ、先制の左越えソロを放った。
「手応えは十分。打席の中でしっくりくるスイングができている。練習量が結びついているかどうかは分からないが、例年より状態が良いのは間違いないよ」
オープン戦4試合で11打数6安打、3本塁打、4打点、打率.545と、早くもバットが火を噴いている。これには小川監督も「ずっといい状態できている。青木と山田で一、三番か、それともバレンティンが三、四番か、そこが決まれば(全体の)打順も決まってくる」と、起用法についてうれしい悩みを口にした。
「地獄」と形容された沖縄での浦添キャンプ。助っ人も例外ではなかった。だが、キツいメニューを課しながらも、首脳陣のバレンティンに対するケアは見事だった。特に
河田雄祐外野守備走塁コーチは片言の英語(日本語?)を駆使して、アメとムチを絶妙に使い分けていた。この春季キャンプが実質的な初対面となったが、バレンティンの愛称である「ココ」と呼んで自ら距離を縮め、コミュニケーションを欠かさない。守備練習でダレてきたと感じると、すぐさま「ココ、マネジャー、ウォッチ!(監督が見ているぞ)」と小川監督を指して声を上げる。するとバレンティンも気合を入れ直す。そんな光景がたびたび見られた。
昨季は死球や判定をめぐりグラウンドでたびたび騒動を起こし、退場すること3度。さまざまなストレスがバレンティンを暴走させた。だが、心身ともに充実している今季は、そのリスクも減少するはずだ。チームの象徴でもある
青木宣親が戻ってきたことで、勝手気ままな「お山の大将」を気取っていられなくなった。また、
宮本慎也ヘッドコーチというお目付け役も存在する。今季が来日8年目。再び、バレンティンの打棒が爆発する機運は日ごとに高まっている。
文=富田 庸 写真=内田孝治