いよいよ2018年シーズンの開幕が迫ってきた。各球団の開幕投手の顔ぶれも徐々に明らかになってきているが、先日、自身も現役時代にダイエー・ソフトバンクで4度、開幕戦のマウンドに立った斉藤和巳氏に“開幕投手論”を聞く機会があった。

　今季、ソフトバンクの開幕投手には千賀滉大が指名されたが、それを聞いて斉藤氏が真っ先に思いを馳せたのが東浜巨の心情だったという。「今年は開幕投手に強いこだわりを持って臨んでいると東浜に聞いていたので」。

　その東浜と対話の中で話題に上ったひとつが「開幕投手では“ない”先発陣の開幕」についてだったという。開幕試合、開幕投手はもちろんインパクトがある。しかし、2戦目以降に先発する投手にとっては、チームにとっての2試合目、3試合目が自身にとっての“開幕”となる。当たり前の話ではあるのだが、そのとき、チームの空気と自らの緊張感の間にギャップが生まれるのだという。

「開幕戦はチームみんなで緊張感を共有できる。でも2試合目からチームは徐々に空気に慣れていくんです。リリーフ陣も、たとえ登板しなくてもブルペンなどで試合に入っていく。1カード目はまだいいんですけど、2カード目の先発はすごく独特な感じです。自分だけが取り残されているような感覚になる。東浜とは『そんなことあるよな』という話をしました」

　チーム全体は公式戦の空気に慣れてきているのに、先発投手だけは“開幕”の独特の緊張感を持ったままマウンドに上がることになる。そんな孤独感を抱いたまま、開幕先発ローテを勝ち取った投手たちは自らの“開幕”に臨まなければならない、というわけだ。

　開幕投手の栄誉を千賀にゆずった東浜は、西武との開幕2カード目の初戦に登板すること有力視されている。まさに「チームとのギャップ」がもっとも生まれるポジション。敵地・メットライフドームで迎える“孤独な開幕戦”で、どんな投球を見せてくれるだろうか。

文＝杉浦多夢　写真＝佐藤真一