開幕投手候補筆頭の西勇輝。プロ10年目を迎える今季にかける思いは人一倍で、キャンプから熱のこもった投球を見せている
ここ10年間で8度のBクラス、リーグ優勝は1996年を最後に遠ざかる
オリックスだが、近年はドラフトで指名した選手が主軸に入り、着実に戦力が整いつつある。
中でもエース
金子千尋を筆頭に、西勇輝、
ディクソン、
山岡泰輔、ドラ1左腕の
田嶋大樹と、先発陣の層は年々厚みを増している。昨季、先発ローテを務めた左腕の
松葉貴大、昨季途中に先発に再転向した2014年のドラ1右腕・
吉田一将がオープン戦前に結果を残せず、ファームでの調整を命じられるなど、二軍の面々を見ても層の厚さは明らかだ。
エース・金子には先発陣の軸としての期待は今季も不変。そんな右腕に「エース論」を聞いたことがある。
「負けない投手。貯金をつくれるのがエースだと思います」
そう即答しつつも、マウンド以外でも大事になるとも話した。今季35歳を迎える金子。「僕も先発投手の中で最年長。その意味でも練習、試合に挑む姿勢を、周りに示して信頼を得る必要があると思うんです」と、強調したのは“姿勢”だ。だが、少し言葉を選びながら自身の思いが口をついた。
「僕が言うのも、おこがましいですが、僕が入団してから『エース』と呼ばれる方がいなかった。
川越英隆さんがいましたが、途中から中継ぎもされていたので。だから『エースはこうあるべき』という姿勢が、自分の中で分からないんです」
絶対的エースの不在。それは歴代の開幕投手を見ても明らかで、金子が入団した05年から大役を務めたのは金子を含めて6人。現役ではディクソンのみ。そのディクソンも、オフに右ヒジを手術した金子が開幕に間に合わなかった15年だった。
今季の開幕投手候補には西、山岡の名が挙がる。2人のどちらかが開幕投手を務めれば、金子を週の頭・火曜日のマウンドに固定できる利点は大きい。さらに大役の“重圧”を経験することで成長にもつながるはずだ。今季だけでなく、長い目で見ても、新・開幕投手の誕生はチームにとって大きなプラスになるのは間違いない。
金子自身も08年に初の開幕投手を務めると、同年から2年連続で2ケタ勝利を挙げるなど頭角を現した。そのエースに続く“柱”は誕生するのか。今なお争いが続く3月30日の開幕マウンド。そこに立つ投手には“新エース”、そして“低迷打破の旗手”として大きな期待がかかる。
文=鶴田成秀 写真=佐藤真一