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「野球をやめたときが頂点だと思う」と言った上原浩治

 

巨人復帰会見の上原浩治


 あれは2007年のことだ。巨人の上原浩治に「一人のピッチャーとして目指すところは?」と質問を投げかけた。すると次のような言葉が返ってきた。

「具体的な目標はない。常に上を目指しているだけですから。頂点はありません。野球をやめたときが頂点だと思っています。そこまでは、ずっと上を目指していかなくてはいけない」

 この年、上原は両太ももの故障で出遅れていた。復帰したのは4月下旬。そのとき当時の原辰徳監督からクローザーへ配置転換を打診された。決断はたやすくなかったが、原監督の熱心な説得を受け、悩んだ末に受け入れた。背景には豊田清の不振と、早期復帰を促してくれた原監督への感謝の気持ちがあった。

 5月2日の中日戦(ナゴヤドーム)で球団5000勝目の最後を締めてプロ初セーブを挙げると、2イニングの登板もいとわず、チームを勝利に導き続けた。夏場からはさらに調子を上げ、8月4日のヤクルト戦(神宮)で球団史上初の4日連続セーブ。中日、阪神との優勝争いが激しくなった8月には月間11セーブの球団新記録を達成し、レギュラーシーズンで球団記録を更新する32セーブをマークした。

 抜群の制球力とフォークボールを駆使し、抑え不在というチームの長年の課題を解消。不安定だった戦いは一変し、心理的な重圧が減った先発陣は躍進した。MVP級の働きで5年ぶりのV奪回に貢献した。

「しんどいポジションでいい経験をさせてもらった。先発投手の勝ち星を消してはいけないという思いは、ほかのチームの抑えよりある」とも語っていたが、やはり進化を止めない、あくなき上昇志向が根底にあるからクローザー転向にも成功したのだろう。メジャーへ旅立った後も、レッドソックス在籍時の2013年にワールド・シリーズで世界一の胴上げ投手に輝くなど活躍し、開幕直後に43歳となる今も衰えを見せない。

 今回の巨人復帰会見でも若手に対して「一生懸命野球をしている姿を肌で感じてくれればいいかなと思います」と語っていたが、チームにとって背番号11の存在は計り知れない価値があるのは確かだ。

文=小林光男 写真=小山真司
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