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週刊ベースボール60周年記念企画

【週ベ60周年記念企画143】『水原は東映で男になれるか 1960年プロ野球十大事件の立役者』【1961年1月4日号】

 

今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

当事者の話をふんだんに盛り込んで


表紙は西鉄・稲尾和久


 今回は、月号だけは年が変わり、『1961年1月4日号』。定価は30円だ。グラビアはオフでリラックスする選手たちを掲載し、巻頭は『メリケン波止場に遊ぶ』で阪神吉田義男村山実の神戸散策。のちには不仲もウワサされた2人だが、この時点ではそんな雰囲気は欠片もない。

 本文巻頭は『水原は東映で男になれるか?』。巨人監督を退任した水原茂。その動向が長く注目されていたが、12月8日、ついに東映監督就任が決まった。このオフ、記者たちは進路がはっきりしない水原を必死に追いかけた。それについて水原に聞くと、「報道関係はおかげでずいぶん儲かっただろう。人間追われていることが分かれば、逃げてやろうという気になるものだ」と言ってニヤリと笑った。短気でプライドが高すぎた印象はあるが、愛嬌もたっぷりある人だったようだ。

 今回は恒例企画『1960年プロ野球10大事件の立役者』もあった。

 まず項目から。

「水原になぐられて」

「徳武争奪戦の涙」

「岩本の中途解任」

「永田、西本の馬鹿野郎事件」

「三原大洋入りの真因」

「大洋優勝に使った金」

「川上登場の陰の演出者」

「別所が302勝するまで」

「山内の振り逃げ事件」

「連続20勝成るの日」

 どれもそそるが、紹介するスペースに限りがある。
 いずれも単なる記者の客観原稿ではなく、三原大洋入りの記事なら、三原脩監督夫人からと、当事者たちの証言を盛り込んでいるのが、売りだった。

 2つほど簡単に紹介する。「水原になぐられては」は1960年10月2日、V逸のイライラから水原監督(巨人時代)が殴った深山カメラマンの話だ。事件の真相を細かく語り、さらに「事件後、大阪読売のある人が“巨人にとっては深山様さまだよ。これで水原をクビにできるきっかけができたんだから”というのを聞いたときは、なんとも言えない妙な気がし、水原さんて気の毒だなと心から思ったものです」と締めている。

 馬鹿野郎事件は、前大毎監督・西本幸雄監督の話が中心だ。事件は日本シリーズ第2戦が終わった10月12日の夜だった。都内でコーチ連中と過ごしていた西本に永田雅一オーナーから電話が入る。失敗したスクイズなどを例に挙げ、「作戦が消極的過ぎる」と責めたてた。

 西本が切れたのは、「だいたいきみのやり方が悪いってことは、評論家も認めているんだよ、きみ」の一言だったようだ。

「会長、私はチームの状態を見て、そのうえで作戦を立てているんですから、第三者がとやかく言うことはないと思うんですよ。だいたい評論家なんてのはですよ、結果を見ては云々してるじゃないですか。そんな結果論を取り上げて言ってきても困りますよ」

 今度は永田がぶち切れた。

「きみはわしにたてをつこうというのか。負けた責任は、全部君にあるんだ。これは万人の認めていることだ」

 西本も止まらない。

「そうですか、そんなことで責任を云々されるのでしたら、私はやめさせてもらいます」

 その後も応酬があったらしいが、永田オーナーの「馬鹿野郎」が本当にあったかどうかがぼかしてあった。ただ、西本はそのとき、本気でやめようと思ったわけでなく、是が非でもここから逆転日本一を飾り、見返したいと思っていた。
 だが、結果は無情の4連敗……。

 以下、宣伝。

 週べ60年記念シリーズ『巨人編』が好評発売中。次回は日本ハムの予定です。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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