同じプロ野球といえど、一軍とは少し光景が異なる。ネットの移動などはコーチたちが行い、練習前後には選手自らグラウンドを整備。環境は一軍ほど充実していない。
ウエスタン・リーグの開幕を5日後に迫った3月15日。オリックス二軍の選手たちが、舞洲バファローズスタジアムで練習を行っていた。開始時間は午前9時30分。昼食を挟み、シートノック、紅白戦、フリー打撃、ティー打撃と、全メニューを終えたのは午後5時過ぎ。長時間の練習もナイン、指導者の声が絶えず、活気に包まれる球場は、どこか“プロ”というより“アマチュア”の雰囲気さえ感じさせた。
そんな練習を真剣な眼差しで見つめつつ、ときに身振り手振り、指導を行っていたのが田口壮二軍監督だ。指揮官は言う。
「誰ひとり、あきらめてほしくない。漠然と『野球をやっています』となってはいけない。一軍に貢献できる『武器』を誰でも持っていますから。それを引き出してあげるのが僕の仕事だし、そのためには明るい雰囲気も作らないといけない。俺たちやるんだという意識を持たせないといけないんですよね」
午前中には後藤駿太に対し、打撃の構えの際、バットを体の前にユラユラと揺らすように助言を送っていた田口監督だが、「僕の感覚は決して教えていない。ベースは(後藤)駿太の感覚ですよ」ときっぱり。バットをスムーズに出させる助言も、選手自身との会話の中でたどり着いた、1つの方法だ。
フリー打撃では、
岡崎大輔、
佐野皓大、
根本薫ら、若手選手がケージの後ろで見守る田口監督に、自ら声をかけて助言をあおる。レベルアップして飛躍を果たす。そんな雰囲気は当然、ナインからも漂っていた。
開幕一番・中堅の座を手中に収める
宗佑磨ら、若手が続々と頭角を現しつつあるオリックス。それでも「もっともっと、タフな若手が出てきてほしい」と、田口監督は語気を強めた。
「勝負師、仕事人になってほしい。野球になったら、とことん打ち込む。そんな選手になってほしいんですよね」
ひたむきに、貪欲に野球に打ち込み、腕を磨くファームの選手たち。イースタン、ウエスタンの両リーグは一軍よりも一足早く開幕。より強い向上心を抱く選手たちの戦い、そして成長にも注目してみたい。
文=鶴田成秀 写真=佐藤真一