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埼玉西武の野球が変わる!新設された「IT戦略室」とは?

 

昨秋、データ分析などを行う「IT戦略室」を新たに誕生させた埼玉西武ライオンズ。所沢移転40周年の節目を迎える今季、10年ぶりの優勝を目指すチームに、どういった点で力になろうとしているのか。新設された部署の一員となった市川徹氏に話をうかがった。

業務を効率化して、より自らの仕事に従事


2年目を迎える辻ライオンズ。IT戦略室がチームに新たな彩りを加えるはずだ


――昨秋、「IT戦略室」を起ち上げ、今季から本格稼働させるということですが、まず、その役割としてどういったことを考えているのでしょうか。

市川 基本的には2つ目的があります。まず1つは裏方の業務の効率化です。多くの労力を費やしていた作業を、ITを使って効率を良くする。そうすることで時間に余裕が生まれ、裏方が本来専念すべき専門分野の仕事に集中する環境をつくることができますから。スコアラーだったら分析、メディカル部門だったら選手のケガ予防やリハビリに時間を費やせる。ひいては、それがチームの勝利につながると思います。

――ムダなことを省き、より重要な部分に力を注げるようにする、と。

市川 あとは現在、ITを使ってさまざまなことができる世の中です。チームに活かせる最先端の機器や技術を探し出したい、と。大学教授や企業の研究者が野球に役立つ研究を結構やっているのですが、その情報がこれまで入ってこなかった。そういった方々とも連携が取れるようになって、何かを生み出す。今までなかった概念を取り入れて、ゼロをプラスにすることも目的となります。

――今春キャンプではスーパースローモーション撮影機器「スポーツ・コーチング・カム」を運用していましたね。

市川 トライアルでキャンプ期間中に使用しました。普通のハンディカメラだと1秒間に40〜60コマくらいしか撮影できません。選手が漠然と見るのであれば、それで十分。しかし、スポーツ・コーチング・カムは1秒間に300コマの撮影が可能です。例えば投手がボールをリリースする瞬間の指の掛かり具合もはっきりと分かりますから。

――本当に細かい動きをチェックすることができるのですね。

市川 これはコーチから要求されたのですが、ダブルプレーのときの二塁手のセカンドベースの踏み方を撮影してくれ、と。今季からリクエスト(判定に異議がある際、監督が映像による検証を要求できる制度)が導入されますよね。シビアな局面で内野手の離塁の早さが、その対象となる可能性が高い。ですから、このタイミングならアウト、このタイミングならセーフというように野手の感覚を合わせておくことが目的。いろいろと使い道はあると思います。

主観と客観を融合させて勝利へつなげる


――メジャー・リーグでは全30球団、プロ野球では広島を除く11球団が導入している高性能弾道測定器「トラックマン」も有効活用していくのでしょうか。

市川 トラックマンは2016年6月から球場に設置しました。データもたまってきていますし、昨年まではまだ生かされていませんでしたが、首脳陣、選手と話し合いながら活用していきたいと思います。

――トラックマンのデータはどういった点で生かされそうでしょうか。

市川 例えば投手コーチも感じていたのですが、やはり数値を見ると投手がイニングを重ねるとボールの変化量が落ちてくる。トラックマンのデータを考慮して、投手の代え時を見極めることもできるでしょう。また、さまざまな数値が落ちたときには、どこかしら体に影響もあるはず。なので、イニング間にその部分のケアをすることで、パフォーマンスを向上させることもできるだろうということをトレーナーと話したりしました。

――今まで主観的だったことが、データが介在することにより、客観的になるんですね。

市川 ストレートも投手によって全然違います。シュートしたり、カットしたり、伸びながらカットしたり。初対戦の投手に対しても打者にトラックマンの数値を基にして、「誰々のストレートのような軌道だ」と伝えることができます。そういったことをスコアラーと話し合いながら、できるようにしていきたいです。

――そのほかにもトラックマンのデータを生かせそうな点は?

市川 編成面で活用していきたいです。二軍に埋もれているけど、トラックマンのデータではウチで戦力になる余地は十分にある選手を発掘するとか。ただ、トラックマンも万能ではありません。これまでの首脳陣、選手の主観も重要でしょう。それを参考にしながら、各部門と議論を交わしながら、トラックマンのデータを融合させ、チームの強化につなげていきたいと思います。

――今季、埼玉西武の野球がどのように進化していくのか楽しみです。

市川 ウチの選手の素材、能力は(昨年優勝した)ホークスにも引けを取りません。あとは、ITを使って、プラスアルファを加えていきたいですね。

文=小林光男 写真=BBM
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