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センバツ現場発

センバツ現場発/父・前田幸長が果たせなかった夢を追い続ける日大三高・前田聖矢

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

聖なる矢のように突き進む


1日大三高は由利工高との1回戦で快勝し、2011年夏に全国制覇して以来の甲子園白星を挙げた。前田幸長氏(元巨人ほか)を父に持つ前田聖矢は、この日の出場機会はなかったが、バット引きなどでチームの勝利に貢献した


 甲子園に持ち込んだ、とっておきの宝物がある。1冊の野球ノートだ。

「中学1年時、父からメモを取るように言われて以来、指導者から教わったことを書き留めるようにしています。調子が良いときには見ない。悩んだときに、見直すことができるので本当、役立っています」

 5年目に入り、すでに6冊に及んでいるが今回の甲子園の遠征に選んだのは、最初につけた1冊目。「基本が大事。打撃は強気で、初球から仕掛ける重要性を言われました」

 前田聖矢の父は元ロッテ中日、巨人で活躍した左腕・前田幸長氏。福岡第一高のエースとして出場した1988年夏の甲子園で準優勝を遂げている。

「現役時代はあまり、見たことがありませんが、周りの人からプロでの話を聞いたことはあります。父を超えたいと思っています」

 名門・日大三高で2年生ながらベンチ入り(背番号16)。昨秋の東京都大会では10打数3安打1打点で優勝に貢献した。内(二塁)、外野(左翼)を守れるユーティリティープレーヤー。自信を持っている分野は打撃で、左打席からシャープなスイングを見せる。

 由利工高との1回戦前夜。夕食、素振りを終えても落ち着かなかった。初めての甲子園を前に「緊張していた」。父に精神的なアドバイスを求めるため、電話した。

「初戦、どうだった?」

「先頭、ストレートの四球を出した。そこから、三振を取りまくったわ!」

 尊敬する父にもプレッシャーがあった事実を知り、不思議と安心したという。

 由利工高との1回戦はベンチスタート。試合前ノックでは本職の二塁に入り、ゲーム中はバット引きなどをこなし、出番を待った。

 日大三高は12安打5得点で快勝(5対0)。全国制覇した2011年夏を最後に、以降3大会(2012年夏、13夏、17年春)は初戦敗退が続いており、7年ぶりの勝利の校歌が甲子園に流れた。前田は出番こそなかったものの、チームメートとともに勝利を喜んだ。

「父は甲子園準優勝。その成績を超えたい」

 聖なる矢のように突き進む、との由来から「聖矢(せいや)」と名付けられた。野球人として目指すは「メジャー・リーガー」。父は2008年に渡米し、AAA級で登板を重ねたが、メジャー昇格はならなかった。前田は父が果たせなかった夢を追い続ける。まずは第一関門突破。春の頂点まであと5勝だ。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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