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センバツ現場発

センバツ現場発/正捕手不在の高知高。センバツでは大敗も夏にリベンジ!

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

より一層の団結へ


高知高の主将で捕手の島内は大会直前の練習試合で左足首を骨折したため、戦線離脱。代わりに背番号2を着けたのは、外野手登録の奥内(右端)だった


 高知高の3年生・奥内尚野は2月下旬のセンバツ一次登録時は背番号「9」だった。昨秋の県大会は「19」、四国大会ではベンチから漏れており一冬、努力を重ね、167センチの小柄ながらパンチ力のある打撃でレギュラー番号を手にした。だが、この段階で背番号はまだ、配布されていない。首脳陣からも「報道されるかもしれないが、まだ最終決定ではない」と告げらえていた。

 3月上旬に2試合の紅白戦で「メンバー選考試合」が行われた。右肩痛で離脱していた入野皓大(3年)が復調した一方で、奥内は思いどおりのアピールをすることができなかった。奥内は18人のベンチメンバーから外れ3月18日、登録変更選手として、入野と入れ替わる形となった。

 高知高はマネジャーが不在のため、センバツでは奥内が記録員としてベンチ入りする予定だった。しかし、14日にアクシデントが発生する。チームの大黒柱である主将で正捕手の島内優成(3年)が練習試合でスライディングした際に左足首を骨折。大会の出場は難しくなった。

 最終登録変更は開幕前日の22日。ここで島内は無念のベンチ外となり、代わりに背番号「2」で入ったのが奥内だった。高知高の3年生捕手は島内のみ。2年生には西川優樹、池田慎太郎がいるが、ともに故障を抱えており、今回のベンチ入りは難しかった。厳しいチーム状況だったのである。

 明秀日立高との初戦(2回戦)を控えた試合前取材では、事情を知らない記者から奥内に「代役捕手」としての質問が飛んだが「捕手経験はありません。練習をしたこともありません」と答えた。

 試合は1年前まで捕手だった遊撃手・中畑隆之介(3年)が先発出場。5回からは唯一の捕手登録である2年生・平尾暁大が守った。ブルペンは4回までは平尾、5回以降は途中で交代した入野がカバー。島内は記録員としてベンチ入りし、できる限りのサポートをした。

 島内は主将・捕手に加えて、打線の中心。大黒柱不在の高知高は苦戦を強いられた。なかなか見せ場を作ることができず、1対10で敗退している。奥内はレガースをつけ、イニング間の投球練習時サポート役など、献身的に動いた。

 試合後、出場機会なくインタビュールームに引き揚げた奥内は、細々とした声で言った。

「背番号『2』は重かったです。島内が着けないとチームが動かない。機能しない。夏は自分が外野のレギュラーになって、島内に甲子園でプレーしてほしい」

 左足にギプスをつけ、車イスに座ったまま、取材に応じた島内は「夏は自分が連れてきたいと思います!!」と、主将として力強く語った。このままで、高校野球は終われない。今こそ、高知高はより一層、団結するときである。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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