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2018センバツ

センバツ現場発/「野球部とともに戦う!」甲子園の空気を支配した慶應高応援指導部・小幡主将

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

「勝利に導く存在になりたい」


慶應義塾高等学校應援指導部の第64代主将・小幡規之(左)は3月23日の開会式でプラカードを担当。彦根東高との2回戦は三塁アルプスで、満員の観衆を統率した。兄・真之さん(右)は同校野球部OBで昨秋まで慶大でマネジャーを務め、弟の成長ぶりに目を細めていた


 3月23日の開会式。万感の思いで、甲子園を入場行進したのが慶應義塾高等学校應援指導部の第64代主将・小幡規之(3年)だ。同校のプラカードに記載された校名で一部間違いがあり、話題となったが、甲子園の土を踏みしめた感謝の思いは変わらない。

「野球をやっていたので、緊張感がありました。甲子園は大きくて楽しめた」

 他の出場校は部員、マネジャー、生徒会長などがこの大役を務めるが、「応援団団長」(慶應では大学を通じて應援指導部。「団長」の立場は「主将」と呼ばれる)が務め上げるのは稀なケース。赤松衝樹野球部長によれば、慶應義塾高では毎回のことであり「いつも野球部に対してバックアップしてくれる。一緒に戦ってくれる。感謝の意味を込めてです。かなり、喜んでくれたようで、我々としても良かったと思っています」。

 小幡主将は慶應普通部(中学)までは野球部だった。5歳上の兄・真之さんは慶應義塾高、慶大を通じてマネジャーで、同秋は7季ぶりの東京六大学制覇に貢献している。兄弟そろって裏方、サポート役に徹してきたことになる。

 小幡主将は中学時代は捕手で主将。しかし、野球はここまで、と決めていた。

「兄と同じようにマネジャーの道を考えましたが、野球部を勝利に導く存在になりたいと應援指導部を希望しました」

 兄は、弟の成長ぶりを語る。

「家では快活か? と言えばそういうタイプではありませんでした。スタンドでのリーダーぶりを見て、ギャップを感じました(苦笑)。人を巻き込んで、スタンドを一体とさせている姿を目にし、責任感を持てる人間になったんだな、と。環境が人を育てると言いますか……まるで、父兄視点で見ています」

 そして、こんなエピソードを明かしてくれた。

「1年夏、藤平(尚真、現楽天)を擁する横浜高に県大会決勝で負け、秋は関東大会準々決勝(対前橋育英高)で惜敗。あと一歩のところで甲子園を逃してきました。そこで、関係者の前でこう言ったそうです。『私たちの応援の力、後押しが足りなかったから』。その壁を越え今回、ようやく、アルプスに立てて良かったと思います」

 野球経験者だからこそ、ゲームの流れに乗った応援ができるのが小幡主将の強み。慶應義塾高は東京六大学の慶大のスタイルを、そのまま踏襲している。

 9年ぶりの出場となったセンバツ。彦根東との2回戦は3対4と逆転負けを喫したが、小幡主将は1試合を通じて、満員で埋まったアルプス席を統率。マスクをかぶった2年生捕手・善波力は「これだけの応援。頼もしく感じました」と頭を下げた。試合には敗れたが、小幡主将が伝統の慶應応援で甲子園の空気を支配したのは明らかだった。

 慶大でも應援指導部に入るかは、思案中だという。

「甲子園を目標にしてきました。神宮の魅力も早慶戦を通じて知っています。ただ、今は目の前のことに全力で取り組んでいきたい」

 まず、新学年になって大きな仕事は部員集め。現在3年生3人、2年生4人。夏へ向け、満員の横浜スタジアムで応援するのは人員がもっと必要だという。

「新入生歓迎会がありますので、そこで勧誘します。夏の甲子園では大所帯でアルプスに乗り込みたいと思います。これからも野球部と戦っていきます」

 出し惜しみとは無縁。毎試合、燃え尽きるまで応援する。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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