週刊ベースボールONLINE

センバツ現場発

センバツ現場発/星稜高初の全国制覇を狙う2人の2年生投手

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

エンジン全開でピンチを脱出した奥川


星稜高は2年生右腕・奥川(中央)の好救援で富島高との初戦を突破。同級生の左腕・寺沢(奥川の右)も刺激を受けている。中学時代に日本一を経験した2人の目標は、同校初の「全国制覇」で一致している


 2人の「全国優勝投手」を擁しているのが星稜高だ。右腕・奥川恭伸と、左腕・寺沢孝多の2年生投手。先走ってはいけないことは分かっているが、早くも2019年への期待がふくらんでしまう。

 宇ノ気中出身(石川)の奥川は昨年8月の全国中学校軟式野球大会(新潟)を制し、星稜中出身の寺沢も同8月の全日本少年野球大会(横浜)で頂点に立っている。

 奥川は早くから「スーパー1年生」として騒がれ、エース番号「1」を着けた昨秋も北信越大会準優勝に貢献した146キロ右腕だ。今センバツでは主将・四番の竹谷理央(3年)が背番号「1」を着け、奥川は「11」を背負った。

「背番号は気にしていなくて、先発した投手がエースとしての役割が求められる。しっかり、ゲームを作らなくてはいけない」(奥川)

 富島高との初戦(2回戦)は竹谷が先発。だが、星稜高1点リードの3回表に勝ち越し(1対2)を許すと、一死一塁から奥川が救援マウンドに上がった。初球からエンジン全開で、相手の四、五番を連続で空振り三振に斬っている。

 富島高・濱田登監督は肩を落とす。

「せめて、ファウル1本でもあれば良かったが……。かすりもしなかった……。チームの士気が下がってしまった」

 一気に反撃ムードとなった星稜高はその裏、相手の四球、ミスにもつけ込み、打者11人の猛攻で一挙7点を挙げた。大量リードで楽になった奥川は最後まで投げ切り、被安打5、1四球、無失点と安定感抜群。奥川の好投もあり、星稜高は11対2で初戦突破を遂げている。

 140キロ超のストレートは威力があった。奥川は甲子園デビュー戦を白星で飾り、ネット裏で視察するNPBスカウトも「腕の振りが良い。来年の候補」と評価を高めていた。

準備を怠らない寺沢


 同級生の好投を喜びながらも、発奮材料としていたのが寺沢だ。この日の登板はなかったが、「奥川は注目される選手で、自分にとってはライバル。お互い切磋琢磨していきたい」と目を光らせる。

 ストレートで押す奥川とは対照的に、寺沢は最速130キロでスライダー、チェンジアップ、カーブを効果的に使っていくタイプ。昨秋の県大会は背番号「18」でベンチ入りし、2試合に登板したが、北信越大会はメンバーから外れた。「冬場は甲子園でベンチに入るためにやってきた」と、ストレートの球質を高めるため、室内練習場で基本のキャッチボールを繰り返した。3月の対外試合解禁以降のアピールが実り、メンバー復帰を果たしたのであった。

「与えられた自分の仕事をしていきたい」

 3回戦以降も、いつでもいけるように準備を怠らない。

 奥川は言う。

「甲子園で、全国制覇するのが夢です」

 寺沢とも仲が良く、昼食時などは学校の食堂で野球の話題に花を咲かせるなど、チーム全体でもコミュニケーションを欠かさず、結束力を高めている。

 星稜高は春夏を通じて30度目(春12、夏18)の甲子園。センバツは松井秀喜(元ヤンキースほか)がいた1992年、左腕・山本省吾(元ソフトバンクほか)を擁した95年の8強が最高成績であり、今回は当然、その先を狙っている。

文=岡本朋祐 写真=石井愛子
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング