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プロ野球回顧録

中日で初先発の松坂大輔。“怪物”のプロデビュー戦を振り返る

 

本日、ナゴヤドームで行われる巨人戦で中日松坂大輔が先発予定だ。数々の衝撃を我々に与えてくれた松坂。果たして、どんなピッチングを見せてくれるか楽しみだ。ここではプロデビューとなった1999年4月7日、西武時代のピッチングを振り返ってみよう。

6回途中までノーヒットノーラン


プロ初登板の松坂大輔


 投球練習をしただけで球場内に低いどよめきが起こる。

 前年の1998年、横浜高で甲子園春夏連覇を成し遂げ、夏の準々決勝では延長17回、250球を投げ切り伝説となった超高校級ルーキー・松坂大輔。99年4月7日、東京ドーム。西武の背番号18が初めてプロ野球の一軍公式戦のマウンドに上がったとき、球場は一種異様な雰囲気に包まれた。

 対戦相手の日本ハムの一番打者・井出竜也に対する1球目、つまりプロに入って公式戦第1球は149キロのストレート。井出のバットは空を切り、ボールはキャッチャーミットに収まった。その瞬間、球場には観客による大きな拍手が鳴り響いた。

 その後も150キロ前後の速球と、120キロ台の変化球とで緩急あるピッチングを見せ、一番・井出を三振、二番・小笠原道大をピッチャーゴロに打ち取る。

 まだ18歳のあどけない顔の少年が、どうしてこんなに落ち着いて投げることができるのか、その心臓の強さとストレートのスピードに、皆が息をのんだ。

 圧巻は、今や伝説となった片岡篤史との勝負。ストレートを狙っていたであろう片岡に投じたストレートは、155キロを計測した。バットを出した片岡は大きく空振りをし、ヒザから崩れ落ちてしまう。

 片岡を三振に仕留め、初回を3人で終わらせた松坂は、走ってベンチに戻り仲間たちの祝福を受け、少年のような笑顔を見せた。

 一転、18歳の青年はマウンド上でアゴを突き出していた。

「そういう作戦で来るのか、と、ムッとしました」

 5回裏、インハイのボールに怒ったフランクリンがバットを振り上げ向かってきたときのことだ。外国人打者には18歳のルーキーも何もない。半ばブラフではあろうが、並のルーキーならブルってしまいかねない場面での松坂のこの姿は、やはりくぐってきた修羅場が違うのか。結局、あわや乱闘の騒ぎも、全体の筋書きからすれば、アクセントにすぎなかった。そんなことより、5回まで日本ハム打線はノーヒットなのだ。

「ああ〜」

 ため息が東京ドームに充満した。6回表一死後、小笠原の詰まった当たりがセンター前に落ちた。松坂のプロ入り初の被安打。そこまでほぼ完ぺきなピッチング、小笠原と田中幸雄以外はおよそ打てそうな感じがなかっただけに、“この回を乗り切ればひょっとして!?”と期待がふくらみかけたところだったが。

「マジかよ」

 マウンド上の18歳はバックスクリーンに消えていく打球を見送り、思わずつぶやいた。8回裏、低めを狙った141キロの速球が少し高く入ったところを小笠原に持っていかれた。初の被本塁打。これで完封もなくなった。松坂はこの回を終わってマウンドを降りた。

 終わってみれば8回5安打2失点、奪三振9でプロ初勝利を挙げた。

「ウイニングボールは親に渡すと思います。(東尾)監督の200勝のボールと並べるか? いえ、別にします」と松坂は笑った。

写真=BBM
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