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大阪桐蔭高・根尾昂、日本球界を言動でも引っ張る可能性を秘める男/ドラフト1位候補

 

高校生の段階を超越している根尾の姿勢


大阪桐蔭高・根尾は智弁和歌山高とのセンバツ決勝で1失点完投(最後の打者は一ゴロで、投手・根尾がベースカバー)。「三刀流」が史上3校目の春連覇へ導き正真正銘、甲子園のスーパースターとなった


 2018年春、大阪桐蔭高は史上3校目の春連覇を遂げた。ドラフト候補7人を擁し、「最強世代」と呼ばれる逸材ぞろいの中でも、根尾昂が甲子園のスーパースターに上り詰めたと言っていい。

 海を渡ったエンゼルス・大谷翔平が投打の「二刀流」として世界を驚かせているが、根尾はそのワンランク上を行く「三刀流」。今大会は全5試合、五番で出場し、遊撃手として3試合先発し、投手として3勝(完投2、救援勝利1)を挙げる大車輪の活躍を見せた。打率.500(18打数9安打、8打点)と、まさしく万能プレーヤーぶりを発揮している。

 大阪桐蔭高は過去に中村剛也西武)、平田良介中日)、中田翔日本ハム)、浅村栄斗(西武)、藤浪晋太郎阪神)、森友哉(西武)など多くの「大物」を輩出してきた。彼らを育成してきた西谷浩一監督は、歴代の教え子と比較することをあまり好まない。

 その上で、根尾の姿勢は高校生の段階を超越しているという。

「気持ちが強く、冷静で、話していても、どちらが大人か分からない(苦笑)。細かいことを言う必要がありませんし、日常生活を見てもムダな時間がない。体のケア、自主練習に充て、手本になるような選手だと思います」

 智弁和歌山高との決勝を通じて、根尾の人間性を感じることができた。前日、三重高との準決勝は先発・柿木蓮(3年)を受け、5回からのロング救援で12回(8回無失点)まで投げ切った。決勝も2失点完投で、昨春に続く胴上げ投手となったわけだが、根尾は「全員野球です」と勝因を語った。

 それは、なぜか?

「中盤、終盤、苦しいときも柿木がいてくれることで、全力で行けた。そういう意味でも、チーム全員の勝利だと思います」

 柿木は背番号1を着ける148キロ右腕エース。「選手層の厚さ」と言ってしまえばそれまでだが、柿木もこの決勝の舞台で投げたかったに違いない。その思いを察知していたからこそ、根尾はブルペンで準備してくれた仲間への気遣いを忘れなかったのだ。

 大阪桐蔭高はこの試合、4回に先制点(2点)を許しているが、そのきっかけを作ったのが、二塁手・山田健太の失策だった。2回にもイージーゴロを弾いており、名手とは思えない動き。山田も昨春の決勝の舞台を経験しているが「グラブが手につかなかった。決勝は独特の雰囲気。まだまだ、力不足だと思った」。山田はエラーの際に根尾へ「悪い!」と言うと、笑顔で「OK!」と応じてくれたという。「根尾に助けられた。救われました」(山田)。

 この失策についても「攻めた結果だから、ダメージはなかった」とサラリ言った。それよりも、自らの「失投」により2失点したことを悔いた。どんな状況になっても、焦らない。勝負師たる姿を背番号6から見た。主将・中川卓也(3年)にとっても、困ったときの相談相手が副将・根尾。チームメートに頼られ、指揮官も全幅の信頼を寄せる。

 もちろん、ドラフト上位候補にリストアップされており、将来の日本球界をプレーだけでなく、その言動でも引っ張っていけるだけの「至宝」となるポテンシャルを秘めている。

文=岡本朋祐 写真=早浪章弘
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