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もう1つの「雑草魂」 日本ハム・村田透が目指す夢

 

今シーズン初勝利をマークして吉井理人コーチと喜びの表情を見せる村田


 勝利が決まった瞬間、温和な笑顔を浮かべて白い歯を見せた。

 4月5日の楽天戦(楽天生命パーク)で日本ハムの先発マウンドに上がったのは、日本球界復帰2年目の村田透。キャンプ、オープン戦で着実に結果を出し、多くのライバルとの競争を制して開幕6試合目の先発の座をつかみ取った。

 序盤こそ「完全に意気込みすぎました(苦笑)」と気合が空回りしてオコエのホームランで1点を失ったが、アメリカ仕込みの打者の手元で動くムービングボールを武器に8回4安打1失点の好投。完投こそならなかったが、昨年に続く「NPB2勝目」を手にした。

 ここまでは波乱万丈、天国と地獄を味わった野球人生だった。2008年の大学・社会人ドラフト1巡目で華々しく巨人に入団するも、わずか3年で戦力外……。球団からは裏方としてチームに残る話もあったが、現役にこだわって単身アメリカへ。ほとんどが過酷なマイナー暮らしであり、もちろん通訳もいない中でもがき苦しむ奮闘の日々。それでも野球が好きという情熱に加えて、村田の心の大きな支えになっていたのが同じ大体大の先輩で巨人に戻ってきた上原浩治の存在だった。まぶしいまでにメジャーでも輝きを放つ先輩の背中を見ながら「上原さんの雑草魂という言葉がすごく好きですし、いつか同じ試合で投げ合ってみたい」という思いが、村田の大きな原動力の1つになっていたという。

 結果的にアメリカでその夢は叶うことはなかったが、運命のめぐり合わせなのか、今シーズンは交流戦で同じ試合のマウンドに立つチャンスが生まれた。「ずっと同じ試合で投げることを想像して練習してきた。追いつきたいですし、上原さんに負けないくらいの成績を残して恩返しがしたいです」と目を輝かせる。

 決して目立ちはしないが、もう1つの「雑草魂」を胸に飛躍を誓う男が歩む野球人生。その道程には、まだまだ続きがある。

文=松井進作 写真=井沢雄一郎
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