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高校野球リポート

今秋ドラフト候補、横浜高・万波中正の現状は?

 

激しいチーム内競争に募らせる危機感


プロ注目の横浜高のスラッガー・万波は県大会初戦(対旭丘高、2回戦)で1安打1打点。かつての四番もこの試合は七番と、もがき苦しんでいる状況だ


 ネット裏にはNPB5球団のスカウトが詰め掛けた。お目当ての一人は、横浜高の190センチスラッガー・万波中正。旭丘高との県大会2回戦前に「守備面で動きが良くなっている」と成長ぶりを語ったのは、横浜高OBの中日小山良男スカウトである。

 同ポストとなって1年目であり、3月の対外試合解禁以降、1試合を視察している。

「前任者からの引き継ぎがありましたが、昨年までの姿を見ていないので、私の中ではまっさらな状態。どんなプレーを見せてくれるか楽しみです」

 横浜高で20年前、松坂大輔(中日)とバッテリーを組み、1998年の甲子園で春夏連覇を遂げた正捕手は落ち着いた口調で語った。

 万波は1年春の県大会からベンチ入りし、「大器」として騒がれた。1年夏、2年夏の甲子園に出場し、四番を務めたこともあるが、この日は「七番・右翼」。

 平田徹監督によれば「レギュラーポジションは安泰ではない。死守するためにもがいている」状態だという。チーム方針として、1対0で守り勝つ野球を目指している。バッテリーを中心とした守りを大前提として、チーム打撃を確立した上で、最後に自分自身のバッティングという「3本柱」を追求している。

 こうした背景もあり、万波は対外試合解禁以降、バットをやや短く持って打席に立っている。また、すり足にすることによって「バットのヘッドが走る。振り抜きやすい」と、高校通算本塁打は6本積み上げて、34本としていた。

「四番にこだわりはありません。自分でコントロールできるところではないので……。野球はチームスポーツ。監督から言われた打順でベストを尽くすだけ」

 この日の試合、3打席凡退の後、第4打席では左前適時打を放った。チームは12対0の8回コールドで初戦突破も、万波は「満足できる内容ではない」と貪欲に語る。

 横浜高には今年も有望な1年生が入学してきており、平田監督は「英才教育です」と、すでに7人がベンチ入り。以前ならば、平田監督は万波を「我慢」して起用していたが、すでに「育成期間」は終わり、結果が求められる立場にある。激しいチーム内競争の中におり、万波は「目の前の試合に、ベストコンディションで臨む。その積み重ねが大事」と危機感を募らせている。

 卒業後の進路についても「今は言う段階ではない。自分がこの1年、どうだったか? その先に(ドラフト)あると思う」と慎重なコメント。

「一喜一憂をしないのが、このチームのテーマ。1試合1試合が大事。毎打席、同じ集中力で立ちたい」

 中日・小山スカウトは「また、見てみたいですね」と期待感を込め、球場を後にした。万波と言えば、1年夏の県大会で横浜スタジアムのバックスクリーンへライナーで運んだように、規格外の飛距離を誇る。ポテンシャルの高さは間違いないだけに、3回戦以降のパフォーマンスからも目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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