強固な精神力、大一番での強さ
“エース”ではなく、“真のエース”。その称号を得るのは簡単ではない。まず実績を積み上げることだ。わずか1、2年、中心投手として活躍しただけでは“にわかエース”に過ぎない。チーム全体、首脳陣、選手から信頼を集めるためには何よりも勝ち続けることだ。
ただ、勝つだけではいけない。点を取られずに勝つ。防御率も良くなければ周囲からの信頼も得られないだろう。もちろん1年間、先発ローテーションを守る屈強な体も必要だ。
何事にも動じない強固な精神力、さらに大一番での強さも必須。チームが連敗しているときにそれを止める、またシーズンの行方を左右するポイントとなる試合、日本シリーズといった大舞台でしっかりと結果を残す投手でなければいけない。
私の現役時代ではNO.1は
山田久志か。アンダースローながら140キロを超えるストレートを投げ込む。何よりもプロ野球記録の12年連続開幕投手の記録を持つ。それが何よりの証だろう。近鉄には
鈴木啓示さん、
ロッテには
村田兆治もいた。彼らも“真のエース”だろう。村田は今でいうトミー・ジョン手術から復活。その生き様でもナインを力強くけん引した。セ・リーグには
巨人の
堀内恒夫さん、
高橋一三さん。そして大洋の
平松政次、
ヤクルトの
松岡弘もそうだろう。
西武コーチ時代で言えば相手チームでは近鉄の野茂英雄がNO.1だ。体の大きさを見れば分かるだろうが、非常にタフだった。野茂と対戦して、大量得点を取って打ち破った記憶はあまりない。勝利をつかむにしても、薄氷を踏む思いだった。コントロールが悪く、四球は多かったが、やはりあのフォーク。振らなければボールになるのだが、みんなスイングしてしまう。それほどストレートと見紛い、キレもあったのは間違いない。
写真=BBM