興奮した口調で野球解説者の
伊原春樹氏が言葉を発してきた。
「えげつないストレートをほうるなあ!」
4月12日、取材のために自宅を訪れときのことだ。前日、甲子園で行われた阪神対広島戦をテレビ観戦。阪神先発の高橋遥人のピッチングに目を奪われたというのだ。
強力広島打線を7回2安打無失点に抑えた新人左腕。阪神の新人が甲子園で初登板初先発初勝利を飾ったのは1959年の
村山実以来の快挙で、左腕では2リーグ分立後、史上初の快挙だったという。
「とにかく球持ちがいいよな。それで、ゆっくりとしたモーションからスピンの利いたストレートを投げ込む。初速と終速の差が少なそう。打者は相当、速く感じていると思うよ」
2回裏、
安部友裕には初球、内角へ144キロのストレートでファウル、2、3球目は内角高めへ146キロ、145キロがボール、4球目はまたしても内角へ145キロのストレートでファウル。カウントは2ボール2ストライク。最後は外角低めへ129キロのスライダーをしっかりと制球し、空振り三振に仕留めた。
「相手の顔の付近に投げておきながら、まったく動じないないで、再び内角に投げて追い込んだ。そして、定石どおりフィニッシュは外へのスライダー。度胸も満点だね」
伊原氏はシーズン開幕前、阪神を4位に予想していたが、これで考えを改めたという。
「高橋が今後も先発ローテで投げて、あと藤浪(晋太郎)が復活すればAクラスに行くんじゃないか」
12日、高橋は一端、登録抹消されたが、最短の10日間で再登録され、22日の
巨人戦(甲子園)で先発予定だという。そのピッチングに注目したい。
文=小林光男 写真=松村真行