長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 スペンサーをマネして
27本塁打の代打世界記録を持つ“世界の代打男”高井保弘(阪急)。高い打撃センスと投手のクセを見抜く観察眼、そして、ひと振りに懸ける高い集中力が武器だった。
打撃の精度を上げるため、対戦相手のクセや特徴はノートにずっと書き留めていた。これは
スペンサーがやっていたのをマネしたもので、セット入るときの手首の角度やグラブの位置、手首の筋の動き、配球パターン……あらゆる情報を事細かに書き記した。
一度、ある選手から「お前のメモとベンツを交換してくれんか」と言われたが、もちろん断っている。
1974年の球宴では、史上初の代打サヨナラ本塁打。このときも相手の
松岡弘(
ヤクルト)のクセを把握した上で「併殺狙いで内角に
シュートを投げてくると読み、軸足を少し引いて待っていた。それ以外の球は振る気がなかった」という。
DH制度の導入で77年から3年連続規定打席到達となり、結果的に代打は減った。
写真=BBM