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週刊ベースボール60周年記念企画

【週ベ60周年記念企画171】40勝と三冠王への挑戦【1961年7月10日号】

 

今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

中西の忠告で復活した稲尾


表紙は左から中日濃人貴実監督、権藤博


 今回は『1961年7月10日号』。定価は30円だ。

 西鉄のエース、稲尾和久が6月末12節終了時点で16勝。対して巨人長嶋茂雄は打率.354、11本塁打、42打点。本塁打のみ大洋・桑田武と並んでいるが、打撃3部門トップに立っている。

『40勝と三冠王への挑戦』では、この2人の記事が載っている。稲尾は57年から3年連続30勝以上が、60年は20勝止まりで限界説も流れていた。

 それが打って変わって、この年は開幕から絶好調。40勝の声もあったが、稲尾は「投手は20勝さえすればいいんです。それ以上はいくら勝ってもおまけ」と言い、あまり自分のことを話したがらなかったようだ。

 先輩である中西太によれば、復調の一つの要因は内角への速い球を磨いたからだという。前年の稲尾は故障が重なったこともあり、外のスライダーでかわすようなピッチングが多かったが、中西は「サイ(稲尾の愛称)よ、お前はやっぱり速い球で勝負しなきゃいかん。速い球があればこそ外角のスライダーは効果があるんだ」と忠告した。

「稲尾の球は、外に来るやつは案外素直なヤツがあるんでね。食い込むような速い球がないと打たれるんだよ」

 と中西。南海・野村克也が、稲尾が本当に得意する球は、スライダーを生かすためのシュートと見抜いた話は有名だが、それに通じる言葉だ。

 当の中西は58年後半以降、手首の腱鞘炎に苦しみ続けているが、この年は99試合の出場ながら打率.304、ホームラン21本を打っている。同年パのホームラン王は、野村、阪急・中田昌宏の29本(140試合)だから体調万全なら、タイトル争いにも食い込んでいたはずだ。

 ただ、決して手首が治ったわけではない。中西は『佐々木信也連載対談』に登場しているが、そこで下半身の重要さをあらためて思い出したと話し、加えて「上のことばかり考えておった。手首をどう返すかって。手首なんて体について返ったらええんや。体の軸に沿うてね。体で引っ張って、手首がそれについて回るのが本当だと思うんや」とも言っている。

 三冠王を目指す長嶋の最大の問題は「相手が勝負を避けること」。したがって「よし、打たせないなら、こっちは遠く外れても打ってやる」と1キロ以上のバットで毎夜素振りを繰り返し、スイングも鋭さを増そうとしているという

 三冠王については「相当難しいですよ。長嶋に打たせてやろうという投手がそろって、しかも神様が援助してくれんとね」と言っていた。

 なお、61年は梅雨時に各地で大雨が振り、大きな被害が出た。この号でも雨の中で私服姿の中日・権藤博らの写真が掲載されているが、まだ「権藤、権藤、雨、権藤」のフレーズは(本誌には)登場していない。

 以下、宣伝。

 週べ60年記念シリーズ『巨人編』『日本ハム編』が好評発売中です。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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