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林昌範コラム

元DeNA・林昌範 潜在能力は球界屈指の左腕に「もう一度輝きを取り戻してほしい」

 

直球の質はファームのときから目を見張るものがあった


巨人吉川光夫(写真=BBM)


 みなさん、こんにちは。元DeNA林昌範です。連載企画11回目の今回は巨人・吉川光夫について書かせていただきます。

 阪神のドラフト2位左腕・高橋遥人投手が4月11日の広島戦(甲子園)でプロ初先発初勝利をマークしました。打者の手元でうなるような直球を投げられる投手はなかなかいません。その球質で思い出したのが吉川でした。私が日本ハムに在籍していた2009年から3年間ともにプレーしましたが、当時から直球の質は群を抜いていました。ただ、ファームでは圧倒的な数字を残しても一軍でなかなか結果を出せない。「こんな才能豊かな投手がなんで一軍に定着できないんだろう」と不思議に思うほどでした。

 多少球が荒れても、腕を振るのが特徴の投手です。ただ、制球が定まらず四球を出すと「結果を出さなければいけない」と力んで自ら崩れてしまう。周囲はもどかしく見えたかもしれません。でも制球が良くなかった僕は気持ちが分かりました。調子が良いときは先頭打者に四球を出しても無失点で抑えればいいと気持ちを切り替えますが、調子が悪いときや結果を出さなければいけないと重圧を感じると、「四球を出したらどうしよう」とベンチの目が気になり腕が振れなくなります。

 心理状況で投球内容がガラリと変わる繊細な世界です。そんな吉川は12年に14勝5敗、防御率1.71で最優秀防御率、パリーグMVPに輝きます。過去5年で6勝しかしていなかったのになぜ覚醒できたのか。私は11年オフにDeNAに移籍しましたが交流戦でグラウンドで再会した際に、「栗山監督に『四球を出しても抑えればいい』と言われたのが大きかったです」と振り返っていました。

 30歳になった今年は野球人生の岐路を迎えています。16年オフに巨人にトレード移籍しましたが、昨年は1勝のみ。それでもやはり潜在能力は球界屈指です。今年2月に春季キャンプでブルペンの投球を見学した際はすごい球を投げていました。他球団のスコアラーも「この球を見れば吉川はすごい投手だよ」とうなるほどでした。

 今年はマイコラスが抜けて、同じ左腕の田口麗斗投手も本来の力を発揮できていません。吉川は先発ローテーションに定着するチャンスです。「四球を出しても無失点に抑えればいい」ぐらいの気持ちで腕を振ってほしい。同じ左腕でずっと見てきた投手なので、もう一度輝きを取り戻したほしいですね。

記事提供=ココカラネクスト編集部 平尾類
ココカラネクスト編集部

元DeNA・林昌範氏(写真=ココカラネクスト編集部)


●林昌範(はやし・まさのり)
1983年9月19日、千葉県船橋市生まれの34歳。市立船橋高から2002年ドラフト7巡目で巨人入団。06年には自身最多の62試合に登板するなど主に救援で活躍。08年オフにトレードで日本ハムへ移籍した。11年に退団し、12年からDeNAに加入。昨オフに戦力外通告を受けて現役引退した。通算成績は421試合で22勝26敗22セーブ99ホールド、防御率3.49。186センチ、80キロ。左投左打。家族はフリーアナウンサーの京子夫人と1男1女。

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