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パンチ佐藤の漢の背中!

TBSラジオの営業マンになった元横浜ドラフト1位・小桧山雅仁「03」/パンチ佐藤の漢の背中

 

『ベースボールマガジン』で連載しているプロ野球選手の第2の人生応援プロジェクト「パンチ佐藤の漢の背中」。「現役を引退してから別のお仕事で頑張っている元プロ野球選手」のもとをパンチさんが訪ね、お話をうかがう連載です。今回は元横浜ベイスターズのドラフト1位投手で、現在はTBSラジオの営業マンの小桧山雅仁さんをお訪ねしました。

ラジオはどんな環境でも聴けるのが強み


小桧山雅仁氏


パンチ 俺、実はラジオ大好きなんだ。しゃべるのも聴くのも、どっしりって感じでしょう。それで俺、今FMたちかわで日曜20時から、『パンチ佐藤の“ガッツで行こうぜ!”』っていう1時間番組を持っているの。“元気配達人”をキャッチフレーズにしているから、ラジオでも元気を発信していきたい。

 自分の好きな演歌を流して、聴いている人が「よし、月曜からまた頑張ろう」って思ってくれればいいと願ってやっているんだ。俺の番組もそうだけど、今はスマホでもパソコンでもラジオが聴けるから、いいよね。小桧山君もラジオのいいところをどんどん宣伝してくださいよ。

小桧山 あってほしくはないことですが、災害に見舞われたとき、ラジオが必要になるんですね。もともとTBSラジオはAM954kHzという周波数だったんですが、FM90.5MHzでも電波を飛ばすようになって、それまで電波が入りにくかった場所でも聴くことができるようになりました。それに加えて、パンチさんがおっしゃるようにパソコンやスマホでも聴けるようになり、どんな環境でも聴けるのが強みです。

パンチ そうそう、ラジオを聴ける環境が増えて、今若い子も結構聴いているみたいだよね。その中でもTBSの強みは、どこになるの?

小桧山 ウチは今、16年連続個人聴取率1位なんですよ。その理由としてよく言われるのが、パーソナリティを大切にしていること。聴取率調査期間にスペシャル番組を流す局が多い中、TBSはほぼ通常運行ですし、長年務めている実力派パーソナリティが多いんです。

パンチ スペシャル番組に負けないということは、そのパーソナリティたちは“本物”なんだね。

小桧山 そういうことだと思います。自分の言葉をしっかり持っていらっしゃる方々ですね。もう一つクライアントさんに説明するのは、TBSラジオは基本的に情報番組だということ。ピンポイントでちゃんとしたニュースを放送するのが売りだと思っています。

野球から離れた仕事にも共通点はたくさんある


パンチ 野球雑誌として気になるのは、今年4月からナイター中継撤退というニュースなんだけど……。

小桧山 AM5局でジャイアンツ戦の中継がある中、聴取率がトップのうちに、リスナーのニーズに合わせた新番組に切り替えていこうということなんです。だから昼間の番組も、新しいリスナーの層を狙い、若返りを図っているんですよ。その切り替えが2番目、3番目になっては遅い。“撤退”というと非常にネガティブに聞こえるかもしれませんが、トップが最初に新しい試みをするということで、前向きな“改編”だととらえています。

パンチ 確かに「昔からこうだから」というだけでなく、早め早めに何かを変えていくことも大切だね。ただ、スポンサーさんはどんなふうに納得させるつもり?

小桧山 新番組のコンセプトを僕自身きちんと理解し、ただCMを打つだけでなくツイッターやフェイスブックなどSNSと連動させるとか、何か付加価値をつけて、スポンサーさんにはご案内したいと思っています。

パンチ こんな話を聞いていると、もう野球選手の匂いはしないね。すごいな。

小桧山 ありがとうございます(笑)。

パンチ そんな小桧山君から、今後プロ野球界を離れて第二の人生をスタートさせる選手に、どんな言葉をかけてあげたいですか?

小桧山 第二の人生では、おそらくつらいことのほうが多いと思います。だけど野球をやっていたときも、実はつらいことのほうが多かったはずですしね。絶対どこかで楽しいことが来ると信じて。逆に考えれば、いつも楽しかったら楽しいことがなくなってしまいますから。そして、野球のことはずっと好きなままでいてほしい。野球を好きな中で新しいことに挑戦するのは、悪いことばかりではありません。それに、野球からまったく離れていると思える仕事でも、意外と共通点があるものですよ。

パンチ そうなんだよね。野球をやっていて、「なんであそこで打てなかったかな」と思えば、「じゃあこうしてみようか」とコツコツ努力する。で、次も結果が出なかったら、また考えて、「じゃあ今度はこうしてみよう」とバットを振ってみる。毎日同じことをコツコツ、努力する力は体に染みついているもんね。これまでやってきたことなんだから、やる気になればきっとできるよね。

小桧山 挨拶一つとっても、野球選手は言われなくたって簡単にできるじゃないですか。怒られる前に、「すみません!」って言えるでしょう(笑)。謝ることができるのは、かなり得だと思いますよ。

パンチ われわれのころは、自分のせいじゃなくても「すみません!」って言わなきゃいけなかったもんね。特に1年生のときは(笑)。うん、今日もいい話を聞きました。ありがとう!

パンチの取材後記


 今日の小桧山君の言葉には、ハッと気づかされましたね。

「今の若い人たちは、入った時点で僕らより優秀。入社が32、33歳だった僕に比べれば、22、23歳の新入社員はできないことが多くて当たり前なのに、彼らはできる。僕なんかいまだにパソコンもできなくて、指2、3本で打っていますよ」と。

 いやあ、僕はすっかり“頑固ジジイ”になっていました。「今の若いもんは」とか「こんなこともできねえのか」とか思うんじゃなく、「僕にはできないこんなことができるんだ。君たちすごいな」と思う気持ちが大切なんだね。

 僕なんか実際、娘にインスタグラムのやり方を教えてもらっているのに、そういう見方ができていなかった。今の若者たちはある意味、われわれよりずば抜けて素晴らしいところがある。これからは、そこを見てあげようと思いましたね。

 誰に言われなくても、純粋に若い人たちのことを「すごい」と思える小桧山君は素晴らしい。今日は本当に、勉強させてもらいました。

<了>

●小桧山雅仁(こひやま・まさひと)
1969年5月7日生まれ、神奈川県出身。桐蔭学園高から慶大を経て、日本石油時代にはバルセロナ五輪代表として完封勝利を挙げるなど日本の銅メダル獲得に貢献。93年ドラフト1位で横浜に入団すると1年目から44試合に登板した。2001年限りで退団し、02年は台湾球界でプレー。NPB通算成績は122試合で9勝14敗4セーブ、防御率4.30。引退後はTBSラジオに就職し、現在は営業部担当部長兼横浜支局長。

●パンチ佐藤(ぱんち・さとう)
本名・佐藤和弘。1964年12月3日生まれ。神奈川県出身。武相高、亜大、熊谷組を経てドラフト1位で90年オリックスに入団。94年に登録名をニックネームとして定着していた「パンチ」に変更し、その年限りで現役引退。現在はタレントとして幅広い分野で活躍中。

構成=前田恵 写真=山口高明
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