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「僕には無理と思っていた」メジャーで躍動。Dバックス・平野佳寿の好投の根底にあるものとは?

 

メジャーの強打者を相手に堂々たる投球を続けているDバックス・平野佳寿


 34歳のオールドルーキーが、海の向こうで躍動している。今季10試合目の登板となった4月22日(日本時間23日)、2番手でマウンドに上がると、1回を無安打無失点。三ゴロ、空振り三振、遊ゴロとパドレス打線を三者凡退に斬って取った。
 
 オリックスに在籍した12年間で、通算549試合に登板して139ホールド156セーブ。そんな平野佳寿が、メジャー移籍を決めた理由は実に明快だ。

「(自分が)求められているところで結果を出したい。その思いがすべてです」

 だから、移籍先にダイヤモンドバックスを選んだ理由も「最初にオファーをしていただいた」ことだった。

 渡米前の今年1月。メジャー挑戦を直前に控えた右腕に話を聞いたのは、京都での自主トレ中のこと。そこで常に口をついたのは「いつもどおり、変わらずに。自然体で」。飾らぬ性格は言葉の端々から感じ取れる。英語を学んでいるかと聞くと「まだ何もしていない」と笑い、対戦相手への研究はしているかと問えば「向こうに行けば自然と覚えていく」と、決して虚勢を張ることはない。

 そんな右腕に失礼を承知で聞いたことが1つ。大谷翔平(エンゼルス)が同一年にメジャーに挑戦し、各メディアが大きく取り上げているが、刺激になっているのか――。大谷は平野よりも11歳も年下だ。無礼な問いに対しての答えもまた、彼の生き様を象徴していた。

「彼は誰が見てもすごい選手ですから。僕は彼の陰で、ひっそりと活躍していければいい(笑)。しっかり自分の仕事をするだけです」

 メジャーでの目標は、日本時代と変わらず「リリーフ投手として期待されてもらっている以上、1試合でも多くマウンドに上がること」。海の向こうで躍動を続けている要因は、「自分の仕事をまっとうする」姿勢を貫き続けていることにほかならない。

 もともと「『僕には無理』と思っていた」とメジャー志向が強いワケではなかったが、“夢”や“あこがれ”以前に「求められている場所で、自分の力を最大限に発揮する」という単純かつ最も重要なことを続けた結果、彼の働き場は世界最高峰のマウンドに。10試合に登板して防御率1.93という堂々たる成績は、今なお変わることのない信念の賜物だ。

文=鶴田成秀 写真=GettyImages
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