自分がどんな投手なのか。それをしっかりと理解し、地に足を着けて
オリックスの19歳右腕が成長を続けている。
5月1日の西武戦(京セラドーム)。連投の守護神・
増井浩俊の代役として、9回のマウンドに上がった山本由伸が、プロ初セーブをマーク。マウンド上では臆することなく、強打の西武打線を三人で打ち取った。最速は154キロを計測。右打者の外角に逃げていく鋭く曲がるカットボールも148キロを計測し、
山川穂高、
メヒアから三振を奪う快投だった。
プロ1年目の昨季は8月に先発として一軍デビューを飾るとプロ初勝利もマーク。それでも、プロの打者のレベルの高さを感じていた。
「やっぱり一軍の打者はボールをとらえる能力が高い。コントロールミスしたボールは、きっちり芯でとらえられる。簡単に弾き返されてしまいます」
だからと言って、制球の向上を期したわけではない。
「僕は『ビタビタ』とコースを突くタイプではない。制球面も大事ですけど、それより僕は『力強いボール』を投げることを大事にしたい」
昨季を終えて、一番の課題に挙げたのは3つ浴びた被本塁打。「簡単にホームランを打たれているようではダメ」と、目指したのはボールに力強さを増すこと。“力強いボール”とは「打者が差し込まれるような感じ。球速表示以上に打者が速いと感じるボールを投げていきたい」だ。
これが山本の魅力を消すことなく、成長を続ける根底にある。
迎えた2年目の今季。“数字”でも成長を示している。直球の平均球速は149キロを記録しており、カットボールにいたっては13キロも速度を増し、平均147キロに。長いイニングを投じる先発と、短い回数の分、全力でいける救援登板の違いこそあるが、キャンプから目指してきた“力強さ”を見せつけている。
ただ、満足することはない。
「術面は足りないことばかり。でも『野球がうまくなりたい』という思いは誰にも負けないし、負けた良くない。だから、誇れる能力があるなら『向上心』です」
謙虚さと強気の一面が同居する右腕。マウンド上で堂々たる投球は、“誇れる能力“の産物にほかならない。
文=鶴田成秀 写真=佐藤真一