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優勝が消滅しても気を抜かない。ドラフト候補、日体大の東妻勇輔が全身全霊の146球完封劇

 

9回までトップギア


日体大・東妻は筑波大2回戦で先発し、5安打完封で今季4勝目を挙げた


 昨年11月の明治神宮野球大会で37年ぶりの優勝を遂げた日体大。ところが、今春は秋春連覇を逃し、筑波大との4カード目は目的意識を定めるのが非常に難しい戦いであった。

 だが、どんなときもプラス志向でチームを鼓舞するのが日体大・古城隆利監督の指導方針。

「昨年は(神宮大会決勝の)11月15日まで野球をやって、新チームの始動、そして、強化練習がどこのチームよりも遅れたんです。逆にこの春は、秋へ向けて『どこよりも先にスタートを切るんだぞ!!』とミーティングで話してきました。残り試合も全部勝って、13連勝で優勝するつもりでやろう、と」

 春の残り3試合と、秋のリーグ戦は10戦全勝優勝するという意気込みである。

 その思いが、選手にも伝わった。筑波大1回戦で主将・松本航(4年・明石商高)が2安打完封(1対0)すると、2回戦はもう一人のエース・東妻勇輔(4年・智弁和歌山高)が5安打シャットアウトで続いた。

 昨年の神宮大会では準決勝(対東洋大)で松本が完封し、決勝(対星槎道都大)で東妻がシャットアウトで胴上げ投手。それ以来となる、千両役者2人がそろってゼロ封劇に古城監督も「やっとというか……」と苦笑いを浮かべた。

 2回戦(5月6日)の先発・東妻は7四球と制球が安定しなかったが、完封(今季初完投)という結果に「やっとできました!!」と悪いながらも抑えられた結果に、一応の納得の表情を見せた。

「どうしても、(昨秋の)神宮の良いイメージを追い求めて過ぎていた。出来過ぎだったんです」と今春を振り返る。もともとは、後先を考えずに腕を振っていくタイプ。抑えでは自身のスタイルを実行できたが、先発だと、9イニングを見据えてしまい「小さくまとまっていた」と反省する。

 この日の試合前、日体大・辻孟彦コーチから「点を取られたら代えるぞ!!」と告げられていた。このアドバイスが「気合がないとダメなタイプ」(古城監督)という東妻の奮起を促すには最善の言葉だったようで「プレッシャーをかけられた状態で、初回から腕を振っていけた」(東妻)と、9回までトップギアで投げ続けた。この日は自己最速にあと1キロに迫る152キロを計測すると、終盤にも150キロ近い魂のこもったストレートを投げ込み、辻コーチも、成長を感じ取ったようだった。

 全身全霊の146球――。9回には中指のマメが割けたが、志願の続投。救援陣も万全の状態でスタンバイしていたが「そんなに甘くないよ!!」と、登板機会を与えなかった。どんな厳しいコンディションでも投げ切る姿を、後輩たちに見せたのだった。

「大学野球で終わりではなく、その先でもプレーしたいと考えていて、調整とかはなく、常日ごろからレベルアップを目指している。

 日体大はこの日の勝利で、8勝5敗の勝ち点3。5月12日に今季最終戦(帝京大3回戦)を控えている。古城監督は「最後、つぎ込んででも勝ちたい」と、松本と東妻の投入も示唆。今秋までの「13連勝」を継続させる意味でも、良い形で締めくくるつもりだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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