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ベースボールゼミナール

大胆なシフトを敷く根拠はどこにある?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者は現役時代にゴールデン・グラブ賞を3回獲得した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.プロ野球を見ていると、大胆な守備シフトを敷くことがあります。特にMLBなどではとても極端です。それらの根拠はどこにあるのでしょうか。また、思い切ったシフトをベンチから指示されたとき、外野手は何を思うのか教えてください。ちなみに、明らかにバッターには気付かれていると思うのですが、それでもシフトは効果があるのですか?(埼玉県・56歳)



A.プロではデータを信じてチームの方針に従う。バッターがシフトを意識すればスイングを迷うことも。


元ソフトバンク・柴原洋氏


 大胆な守備シフトの根拠はスコアラーが集めた膨大な資料と、それを分析するスタッフの詳細なリポート、そしてそれに対する首脳陣のGOサインです。日本でも対戦球団の選手ごとの詳細な打球方向が記された資料が配られて、それを頭に入れたり、イニングごとに確認してポジショニングの参考にしています。

 とはいえ、日本では各個人が数歩右に寄るとか、個人的に意識する程度のものでしょう。一方でMLBではサードがショートのポジションまで右に動いたり、レフトを空けてライト寄りに外野手をずらしたりと、日本に比べて大胆ですね。これらも球団が用意した資料に基づいたもので、確率の高いほうを選択しているのだと考えられます。

 ワールド・シリーズのような負けられない戦いは別にして、レギュラーシーズンでは空いているスペースに打ってやろうと考えるのではなく、そのシフトの上を越えてやろうと考える文化のようですね。このようにシフトを意識したばかりに、本来のスイングができないというプレッシャーを与える効果もあるのではないでしょうか。

 日本ではここまで大胆なシフトは滅多にお目にかかれませんが、例えば、試合終盤の一打サヨナラや同点の場面で大胆な前進守備を敷く場合があります。当然ながら、これらはベンチからの指示で、チーム全体で統一の意識(つまりこの場合は1点を確実に防ぐという意識)の下、守る必要があると思います。このとき、バッテリーはフライではなく、ゴロを打たせるような配球をするはずですし、外野手は「頭を越されたら仕方がない」という気持ちで守っていると思います。ベンチもそれを承知の作戦だということです。

 ただし、ピッチャーがコントロールミスをして、高めに浮き、頭上を襲う飛球が飛んでくることも当然あるわけで、「頭を越されたら仕方がない」と守ってはいますが、最後まであきらめず、捕れるように努力をします。これは当然ですね。

 バッター目線から考えると、前進守備は当然目に入りますし、これはプレシャーですね。ヒット狙いでつなげばいいのですが、外野の頭を越してやろうとついつい思ってしまいがち。これが力のないアベレージヒッターなら、なおさら力が入ります。ファンの方には心理戦も楽しんでほしいですね。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

写真=BBM
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