長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 イメージを壊すことなく……
1974年、巨人・長嶋茂雄が引退を発表したが、本人のなかには、まだできる自信があった。強く勧めたのは、川上哲治監督だ。73年のオフにも一度、引退勧告をしている。川上には、「長嶋茂雄」のイメージを壊すことなくやめさせ、巨人の指揮官の継がせたいという強い思いがあった。
最後は、それを長嶋も理解した。
「川上さんがやめる。球団が後継者は長嶋だと決めている。ファンもそう思っている。そこで俺一人、『まだ続ける』と言うなんてガキだろう? 巨人というチームの大きな流れの中で、監督を継がなければならないんだ」
ただ、川上のように、打撃を突き詰めた選手はそういうやめ方しかないのかもしれないが、長嶋は落ちるだけ落ちた姿を見せても、決して晩節を汚したとファンは思わなかったはずだ。「ガキでもよかった」と思うファンは、決して少なくない。
写真=BBM