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打撃で「開くか、開かないか」とはどういう意味?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.以前のインタビューで巨人の阿部慎之助選手が、「究極を言えば、打席で考えているのは開くか開かないかの2つだけ」という話をしていました。どういうことでしょうか?(北海道・29歳)



A.バッターは「開いたら負け」が基本的な考えだが、「ここで一本」という場面では開くこともあり得る。



「開くか、開かないかの2つだけ」とありますが、これは状況に応じたバッティングのことを話しているのだと思います。例えば、「この場面は一発を狙いたい」とインコースのボールにヤマを張って打ちにいく場合、開くことを制限してしまってはスイングすることはできません。この場合はあえて体を開き気味にし、懐を大きくしてさばいてやる必要が出てきます。

 阿部選手のライトスタンドへの大きなホームランは何度も目にしていると思いますが、前できれいにさばいていますよね。決して体の開きを抑えたバッティングにはなっていないはずです。

 一方で、試合展開によっては逆方向へのバッティングが求められたり、ボールカウントによっては外へ逃げていく変化球が考えられたりするなど(つまり泳がされる可能性がある)、柔軟に対応をしなければいけないケースも出てきます。そのような場合、体の開き(左バッターならば右肩の開き)を極力抑えてポイントをギリギリまで近づけ打ちに出るほうが、対応がしやすいのです。ギリギリまで引きつけていますから、ストライクゾーンからボールゾーンへと逃げていくボール球にはバットが止まることもあるでしょう。

 つまり、阿部選手はシチュエーションによってバッティングスタイル、考え方を180度変えて打席に立っているということです。私もそうでしたが、基本的にバッターというのは開くのを我慢したいと思うものです。「開いたら負け」と考える選手もいるでしょう。

 実際、阿部選手はホームでの試合前、バント練習場でギリギリまでボールを引きつけ、構えている自分自身の体の正面(右打席側)にファウルを打つ練習をしているそうです。これはなるべく近くまでボールを呼び込む感覚(ポイントをホーム寄りにする)を養うと同時に、開くのをどれだけ我慢できるかということにもつながる練習方法で、私も現役時代、似たような練習をしていたことがあります。

 阿部選手と言えば、少し前に“ツイスト打法”でも話題になりました。打ちに出て体が回転を始めた後に、抜かれたことに気付き、腰をストップさせて緊急的に開きを我慢してボールを拾う(結果的にバットが走る)打ち方ですが、ここでも開くことをケアした技術を磨いていることが分かりますね。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

写真=BBM
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