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呪縛から解き放たれ、さらなる爆発が期待できる巨人・吉川尚輝

 

巨人の2年目・吉川は今季から二塁に定着。5月13日の中日戦(東京ドーム)では中日の先発・松坂大輔からプロ初本塁打を放った


 いくら開幕から「二番・二塁」のレギュラーとして出場し続けているとはいえ、テーブルスコアの個人打率の右横が「空欄」だと少々、寂しいものだ。

 投手を除く先発野手で唯一、本塁打ゼロ。ホームランバッターでないことは分かっているが、もともとサク越えできるパンチ力はある。いずれは出るものだと思っていた。とはいえ、自身を除いたメンバーが数字を積み重ねていく現状、本人も早く“楽”になりたかったに違いない。

 5月13日の中日戦(東京ドーム)で巨人の2年目・吉川尚輝がプロ入り初本塁打を放った。開幕36試合目にしてついに「マル1」が加わったのである。勝手な“見栄え”であるが、一番・坂本勇人(3本塁打)、三番・ゲレーロ(7本塁打)と挟まれる中で、ようやく、テーブルスコアが落ち着いた(数字は5月13日現在)。

 巨人としては、待望の「正二塁手誕生」である。今季、定位置を奪取した岡本和真とともに将来、高橋由伸監督の“傑作品”として語られる時期も来るだろう。しかし、迎える夏場にかけては必ず、疲れによる“失速”の時が訪れるに違いない。「勝利」が宿命とされている巨人だが、ここは、コーチの意見を振り払ってでも、我慢の起用を続けてほしい。

 吉川は入団時から体力不足が指摘されていたが、潜在的なスタミナはある、と見ていた。アクロバティックなプレーを見ても、身体能力の高さは申し分ない。厳しいコンディションの中でも、グラウンドに立ち続けることが大事。つまり、経験を積み重ねることが、先々の野球人生につながる財産となるのだ。

 楽しみが2つある。オールスター(7月13日・京セラドーム、14日・熊本藤崎台)のファン投票が控えており、中京学院大の先輩である広島菊池涼介に、どこまで追随するか。

 また、気は早いが、2年目での最優秀新人賞(新人王)への期待も膨らむ。昨年のセ・リーグは大学時代からのライバル・京田陽太(日大)が受賞。吉川は1年目の昨年は12打席しか立っておらず、新人王の有資格者(60打席未満、入団5年以内)である。

 2016年の日米大学選手権で、2人は二遊間を組んだ。京田が本職の遊撃、吉川は遊撃から不慣れな二塁だったが、抜群のコンビを見せていたのが記憶に残る。京田は昨年11月のアジアチャンピオンシップで初のトップチーム入り。2年後の東京オリンピックも菊池が日本の正二塁手の有力候補だが、吉川が台頭するようだと、侍ジャパン全体の底上げになる。

 吉川は2018年、自らの居場所を確保するターニングポイントのシーズンとなる。親友である中日・京田の前で念願のプロ第1号が出て、安定した守備力に加え、呪縛から解き放たれた打席でも、さらなる爆発が期待できそうだ。

写真=BBM
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