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大学4年秋には本塁打王! 巨人・吉川尚輝の隠れた打力

 

2016年の全日本大学選手権に初出場で優勝し、春の大学日本一に輝いた中京学院大時代の巨人吉川尚輝


 言葉では表現し切れない、心地の良い感覚が両手に残ったという。

 5月13日の中日戦(東京ドーム)の初回、巨人の吉川尚輝は一番の坂本勇人が安打で出塁した直後の無死一塁でこの日最初の打席を迎えた。犠打のサインは出ない。今季開幕から全試合で二番を任されてきた吉川尚は、とっさに「引っ張れるボールを打とう」と進塁打を最優先に考えたという。

 イメージは走者の背後への強いゴロ。しかし……。中日先発・松坂大輔が投じた2球目の内角へのカットボールを強く叩くと、打球はあっという間に右翼席上段へ。推定飛距離120メートルの特大弾は、通算41試合、167打席目に飛び出したプロ初アーチだった。

「(プロに入ってから)初めての感触でした。打った瞬間、行ったと思いました。一生忘れないと思います」

 吉川尚に自身のプレーについて話を聞くと、出てくるのは守備と走塁の話が中心。ドラフト直後にインタビューをした際も、「僕の持ち味は守備範囲と捕ってからの速さ。守備でファンを魅了できるプレーヤーになりたい気持ちが強いです」と、こちらが振らない限り打撃の打の字も出てこない。

 現在は“二番打者”のイメージが強いが、中京学院大時代は主に三番ときどき一番のチームの中心打者。ここで当時の主な打撃タイトルを振り返ってみよう。

■吉川尚輝の中京学院大時代の主な獲得タイトル
◇2014年[2年]=首位打者(岐阜・春)、盗塁王(岐阜・春秋)
◇2015年[3年]=首位打者(東海・秋)、盗塁王(岐阜・春)
◇2016年[4年]=首位打者(岐阜・春)、打点王(岐阜・春)、本塁打王(岐阜・秋)
※岐阜=岐阜学生野球リーグ、東海=東海地区大学野球

 大学では首位打者3度、4年時は打点王(4年春に12打点)に本塁打王(4年秋に2本塁打)にも輝いる。吉川尚本人は「本来はホームランを打つタイプではないです」と照れながら頭を掻いたが、4年時に選出された侍ジャパン大学代表(日米大学野球選手権に出場)では、その年のドラフトで中日から2位指名された京田陽太(2017年のセ・リーグ新人王)が下位を打つ中、主に五番で起用され、5試合で打率.286を残している。

 ルーキー年は故障でスタートにつまずき、その京田には大きな後れを取ったが、数少ない一軍機会で打撃練習を見た高橋由伸監督が「意外に飛ぶ力がある」と言えば、阿部慎之助も「スイングはいい。さすがドラ1なだけはある」と打力を評価。今回のプロ1号もむしろ当然という見方だ。

 周囲の評価をよそに、プロ初アーチ後の吉川尚は冷静だった。「今日はたまたま(ホームランが)打てただけです。相手に嫌がられるバッターになることが今の僕に求められていることなので」。理想は大学4年の春にミート重視で高打率(.490=首位打者)を残した形だろう。塁に出て、かき回すタイプ。これに現在はつなぎの役割を求められるが、時には勝負を決める一振りがあってもいい。そのポテンシャルは秘めているし、「相手に嫌がられる」という意味では、これ以上のものはないはずだ。

文=坂本 匠 写真=BBM

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