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中村紀洋コラム

中村紀洋 体罰がなくならないのは指導者の意識の問題

 

子どもは「できなくて当たり前」。上達するスピードに個人差があることを指導者は頭に入れなければいけない


フルスイングを貫いた現役時代の中村紀洋氏(2001年近鉄時代、写真=BBM)


 中村紀洋です。連載企画4回目の今回は「体罰」についてつづらせていただきます。

 部活や運動に打ち込んでいた子どもが肉体的、精神的苦痛を感じて自殺に追い込まれたニュースを見ると胸が痛みます。なぜ体罰はなくならないのでしょうか。私は指導者の意識だと思います。野球を教える指導者が、「なぜできないんだ!」と小さな子どもに怒鳴る光景をよく見聞きします。「こんな簡単なこともできないのか」という思いからイライラする感情を制御できないのでしょう。

 ただ、これは根本的におかしな考え方なのです。子どもは「できなくて当たり前」なのです。できないから一生懸命に練習する。教えられたことを簡単にできる子どももいれば、時間のかかる子どももいる。上達するスピードに個人差があることを指導者は頭に入れなければいけません。

 私の学生時代は体罰が当たり前でした。殴られたことは数えきれません。そのときは殴られることに特に疑問を抱くこともありませんでした。「そういう時代だったのかな」と思う部分もあります。ただ、それが正しいとは思いません。

 私は「N’s method」(エヌズメソッド)、浜松開誠館高の非常勤コーチで指導に当たっています。「挨拶をしっかりしなさい」と礼儀作法で注意することはあっても、トレーニングや野球の技術を伝えたときに、「なぜできないんだ」と怒鳴ることはありませんし、手を上げることも当然ありません。子どもが委縮しますし、うまくなる可能性の芽を摘むことになるからです。

 浜松開誠館高の部員たちにはしんどい練習のときも、私は「笑って! 笑って!」とゲキを飛ばします。辛いときもあります。でも好きで始めたスポーツを楽しむ気持ちを忘れないでほしい。教えられたことをできたときに、子どもは心の底から喜んだ表情を浮かべます。誰よりもうまくなりたいのは子どもたちなのです。その取り組みを支える私たち大人には大きな責任があると思います。

●中村紀洋(なかむら・のりひろ)
渋谷高で2年夏の90年に「四番・投手」で激戦区の大阪府予選を勝ち抜き、同校初の甲子園出場に導く。高校通算35本塁打。92年にドラフト4位で近鉄バファローズに入団し、「いてまえ打線」の四番として活躍した。2000年に39本塁打、110打点で本塁打王、打点王を獲得。01年も132打点で2年連続打点王に輝き、チームを12年ぶりのリーグ優勝に導く。04年に日本代表でシドニー五輪に出場して銅メダルを獲得。メジャー・リーグ挑戦を経て06年に日本球界復帰し、07年に中日で日本シリーズMVPを受賞した。13年にDeNAで通算2000安打を達成。15年に一般社団法人「N’s method」を設立し、独自のMethodで子ども達への野球指導、他種目アスリートを中心にトレーニング指導を行っている。17年には静岡・浜松開誠館高校で硬式野球部の非常勤コーチに就任。高校生の指導に力を注ぐ。

記事提供=ココカラネクスト編集部 平尾類
ココカラネクスト編集部

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