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大谷翔平が抜けてもなぜ勝てる? 下馬評を覆す日本ハム強さのワケ

 

大幅な戦力ダウンを強いられながらも好調をキープする日本ハム。フロントと一体となった栗山監督の信念の采配が結果にもつながっている


「みんなそればかりをずっと言うんですけど、そもそも昨シーズンも大谷翔平は(ケガで)ほとんどいなかったですからね」

 これは日本ハムのある球団関係者との雑談の中で聞かれた言葉だ。ここまで開幕前の下馬評を覆し、パ・リーグ2位の好位置をキープ。投打でチームの要であった大谷が抜けたことによって、今シーズンの日本ハムはかなり厳しい戦いになるというのが戦前の大方の予想だった。

 大谷のほかにも、抑えの増井浩俊、セットアッパーのマーティン、主戦捕手だった大野奨太らが抜けた中での戦い。それでも開幕前に話を聞いた栗山英樹監督は「昨年よりも楽しみなシーズン」と密かな自信ものぞかせ、さらに「翔平が抜けたとかでチーム作りをしているわけではないので。皆さんが考えていることと、ウチがやろうとしていることはちょっと違うのかもしれない」とも語っていた。

 現在の順位は絶対王者のソフトバンクの調子が上がらず、対抗馬と目されていた楽天も開幕ダッシュに失敗したことも要因に挙げられるが、それだけではなく、チームは常に先を見据えた明確なビジョンを持って、フロントと現場が一体となって用意周到に「2018年への種蒔き」をしてきた。

 顕著な例が正捕手格に成長した清水優心だ。今年はプロ4年目で開幕スタメンを勝ち取り、いまや欠かせない戦力に成長。ファームで3年間の英才教育を経て、昨年のシーズン終盤からはスタメンマスクをかぶらせて経験を積ませてきた。その成果がいまにつながっている。ほかにも、セカンド、ショートで欠かせない存在になっている石井一成もルーキーイヤーから結果が出なくても辛抱強く起用し続け、今日の成長をうながした。石川直也太田賢吾玉井大翔らも同様であり、育成の日本ハムと言われる所以でもある。

 その一方で2018年の栗山監督の采配には「ある変化」も見られる。若手を積極的に起用しながらも結果を出せなければ、例年に比べて見切りも早い。昨年ブレークし、侍ジャパンでも存在感を発揮した松本剛も調子が上がらなければあっさりとレギュラーから外した。「今年は絶対に勝たないといけないシーズンだと思っている。勝つためなら何でもやる」。その決意の言葉どおり、選手が一番能力を発揮しやすい環境を整えながらも時には勝負に徹し、いま一番良い選手、一番戦える選手を見極めながら結果に結びつけている。

 プロ野球選手会が先日発表した「12球団選手の平均年俸」でも全チームの中で最下位だった日本ハム。おカネをかけずとも強いチームは作れる──。それを日本ハムがいま結果で証明している。

文=松井進作 写真=BBM
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