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ベースボールゼミナール

DH制でセ・リーグのピッチャーはどうなる?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.近年のセ・パ交流戦におけるセ・リーグ勢の苦戦もあり、セではDH制の導入が検討されていると聞きました。DH制の導入でセのピッチャーにどのような影響があるでしょうか。また、藪さんが考えるパ・リーグとセのピッチャーの特徴の違いを教えてください。(神奈川県・31歳)



A.個人的にはセのDH制に大反対だが、セにもパワーピッチャーが増える可能性大。



 個人的にはセ・リーグのDH制導入には反対です。せっかく2リーグ制でそれぞれの特徴が出ているのに、なぜそれをなくしてしまう方向に持っていくのでしょうか。

 近年は確かに交流戦ではセ・リーグ勢の苦戦が続いていますが、パ・リーグのチームから見ればピッチャーを打順に組み込む戦いには慣れておらず、これを考慮したベンチワークも不慣れでDHに慣れていないセ・リーグと条件は一緒(ここ数年はホーム&ビジターが2年1セットで、微妙ですが……)。実際、巨人が交流戦を制したことも2度あります。短絡的に物事を判断せず、長い目で見てセ・パの特徴を残すべきだと思います。

 その上で、質問に答えていきますが、まず、セ・パのピッチャーの特徴の違いは、パワーピッチャーの多いパに対し、セはより変化球や制球面の技術に長けたピッチャーが多い、というところでしょうか。もちろん、これに当てはまらないピッチャーもいますし、チームによっても異なる部分ですが、一般的に見てもこのように分類できると思います。

 なぜこのような違いがあるのか。理由を明確にすることはできませんが、3点ビハインドの5回ないし6回に代打を送られることのないパでは、長いイニングを投げることが求められます。当然、球数を抑える必要があり、ストライクゾーンで勝負する強いボール、強い変化球が中心になると考えられます。

 一方のセでは近年は特に継投が当たり前で、交代までにコーナーをていねいに突いて投げていき、6回100球でOKという流れでしょうか。歴史的に見て、実力のパ、人気のセと言われる時代もあり、パの選手たちは派手に目立たないとマスコミに取り上げてもらえないことも1つの要因と考えられます。

 仮にDH制となった場合、変化が求められるのはセのピッチャーでしょう。打席に入らずに済むのですから、走塁や打撃に充てていた練習時間もすべてディフェンスのためにつぎ込み、これに集中することが可能です。試合では代打を送られることもありませんから、先発ピッチャーならば長いイニングを投げることが求められます。結果的に、失点をしても、援護があるまで耐えて投げることも多くなり、勝ち星という面では増える可能性も高いです。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM
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