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再起を目指すヤクルトが選んだ石井琢朗という「スパイス」

 

春季キャンプで選手たちに指示を送る石井琢コーチ


 5月23日現在、首位・広島のチーム打率.251(リーグ4位)に対し、最下位・ヤクルトは打率.253(同3位)。本塁打数は広島の43本(同2位)に対しヤクルトは34本(同4位)。10ゲーム差と大きく離されている状況だが、今季のヤクルト、打撃面では十分に健闘していると言っていいだろう。

 その仕掛け人の1人が、広島から“移籍”してきた石井琢朗打撃コーチだ。指導法は広島時代とあまり変わらないという。重視しているのは実にシンプルで、「振る力」だ。

「バットを振ることは、打つことの基本ですから。いろいろな細かい技術はあるのですが、その裏付けとしてしっかり振れることが大前提。春季キャンプだけでなく、年間を通じて振ること。キャンプは大事ですし、開幕に合わせることも大事ですけど、それだけではない。それこそ、9月、10月までしっかり振る体力があるかどうかが大事なんです」

 ただし石井琢コーチは、即効性を求めているわけではない。

「チームには若い選手が多いですから。チームとして育成を課題としており、今シーズンに活躍するというよりも、5年後、10年後を見据えて、今から振る習慣を身につけないと」

 現在は二軍で調整中だが、高卒3年目の内野手・廣岡大志は1試合5安打をマークしてお立ち台に上がった後、ベンチ裏で黙々とスイングを繰り返していた。石井琢朗コーチが掲げる「振る習慣」はチーム内に着実に浸透してきている。

「96敗」からの再起を期すシーズン。最下位という位置は昨季と変わらないが、変革の芽は育ちつつある。

「強いヤクルトを取り戻す“シェフ”は、(生え抜きである)宮本ヘッドコーチであり、土橋勝征コーチなのかなと考えています。ヤクルトが強くなる過程を知っていて、さまざまな修羅場をくぐってきた方たちですから。ヤクルトのカラーも熟知している。僕や(同じく広島から加入した外野守備走塁コーチの)河田(雄祐)さんはあくまで“スパイス”。ただし、そのさじ加減を間違えたら大変なことになる(笑)。僕らの仕事も責任重大ですね」

すぐに結果を求めたくなるのは、選手もファンも同じ。それでもこの「燕改革」の成果は、長い目で見て判断する必要がありそうだ。

文=富田 庸 写真=小山真司
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