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プロ野球回顧録

波瀾と浪漫の球団。マリーンズの前身、オリオンズ

 

永田オーナーが抱いた野望


1970年のリーグ優勝は東京スタジアムで決まった


 5月21日、深夜、ようやく週べの60周年記念『ロッテ編』の作業が終了した(28日発売)。この記事を読んでいただいている方なら、どんなシリーズかはご存じと思うが、球団史というより1958年創刊の週べの記事を抜粋しつつ、時代時代における、その球団の「立ち位置」を示していこうという企画だ(あくまで作り手の気構え。そんな理屈っぽい作りにはしていないので、ご安心を)。

 ロッテの場合、まず球団の2つの歴史から説明する必要があるだろう。

 1950年の2リーグ創設時、パ・リーグの盟主となるべく、毎日新聞が親会社の「毎日オリオンズ」が誕生した。これが現在のロッテのルーツであることは間違いない。オリオンズのニックネームは球団経営がロッテに移行してからも「ロッテ・オリオンズ」として91年まで残っている。

 ただし、この球団の“根っこ”には別の歴史があり、球団史序盤においては、むしろ、こちらこそ本道だった。

 それは映画会社大映の永田雅一社長が野球界に抱いた、いわば浪漫の球団史でもある。

 大言壮語が多く「ラッパ」の異名も取った永田は、1リーグ時代の47年オフに大映球団を設立。プロ球界参入を申し込むも果たせず、既存の東急に合同での球団経営を持ちかけ、「急映フライヤーズ」でスタートを切った。さらに1年後の49年には経営難に苦しむ「金星スターズ」を買収し、単独で「大映スターズ」を設立。つまり映画会社が親会社だから「スターズ」ではなく、単に買収した球団名だったのだ。以後を読んでもらえば分かるが、永田は球団名に対し淡泊、いや合理主義者だったようにも思う。

 2リーグ分立後は、パ・リーグに加入。53年パの総裁となった永田は、人気が上だった6球団制のセ・リーグを追い越す秘策とし、7球団から8球団制への球団増を企て「高橋ユニオンズ」の結成に動く。しかし、高橋が経営難に陥ると、57年、自ら高橋を吸収合併して「大映ユニオンズ」とし、さらにそのオフ、試合編成で無駄の多い7球団から6球団にするため毎日と合併し「毎日大映オリオンズ」、つまりは「大毎オリオンズ」となった。パの繁栄のためではあるが、ドライと言えば、ドライな一連の動きである。

 60年オフには毎日新聞が球団経営から実質的に手を引いたが、その後も「大毎」を変えなかった。これは巨人と読売グループとの関係と同じものを大毎と毎日新聞で築こうとしたようだ。つまりは、パの盟主としての誇りと、セを陵駕する野望の証拠でもある。

野球の神様が贈った最後のギフト


 その後、私財を一部投入し、東京スタジアムを建設。64年からは毎日新聞への失望もあってか、球団名もフランチャイズを強調する「東京オリオンズ」とした。当時の永田のインタビューは週べに何度も掲載されているが、確かに独善的で大げさな表現は多いものの、野球愛(パ・リーグ愛)と先見性は際立っている。

 しかし、少し前から進んでいた映画産業自体の衰退が深刻化し、大映本社、さらに球団も経営難に陥ると、知人の元首相・岸信介の紹介で69年からロッテに支援を頼み、70年からはロッテ・オリオンズに名前を変えることになる。そして翌70年の優勝を花道に、ほぼ名誉職だったオーナーの座も降りた。その優勝決定試合が東京スタジアムで行われ、永田が乱入した大勢にファンに胴上げされたことは、野球の神様の永田への最後のギフトのように思えてならない。

 71年1月22日のオーナー退任会見。球団の経営権が正式にロッテに譲渡された。このとき永田は「私は映画界で生まれ、映画界で死ぬのが運命。大映を捨てて球団につくことはできない」と言った。

 さらに25日には、自ら選手が自主トレをしていた東京スタジアムへ赴き、ナインに別れを告げる……。

「私はオリオンズ・オーナーを去っても、諸君と赤の他人になるのではありません。私の生存する限り、私の魂は球界、そしてロッテ・オリオンズとともに生き続けるんです。近い将来、私は再びプロ野球に帰ってくるつもりです。私は旅に出るんです。そして私が戻ってきたときは、かねてからの宿願である日本一になって迎えてください。どうか球団を立派に育てるために、元気でやってください。諸君。どうか元気でやってください」

 あいさつの後、永田はハンカチに目を当て号泣。ナインもみな泣いた。

 この年12月、大映は倒産。東京スタジアムの経営も手放した。永田はその後、2度と球界に戻ることなく、85年死去している。

文=井口英規(編集長) 写真=BBM

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