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谷繁元信コラム

「晩年、なぜクラシックスタイルにしたのか」/谷繁元信のユニフォーム論02

 

『ベースボールマガジン』で連載している谷繁元信氏のコラム「仮面の告白」。ネット裏からの視点を通して、プロ野球の魅力を広く深く伝えている同氏だが、今回はユニフォームに関して、だ。

ストッキングの4つの時代を制覇


晩年にはクラシックスタイルにしたが、これには理由が


 ユニフォームというのは、いうまでもなく一つのチームで統一されています。その中で自分を格好よく見せたいという意識はありました。体を大きく見せたいと、いつごろからか思い始めて自分の体のサイズよりワンサイズ上げて、ゆったりめに着たこともあります。

 足がそんなに長くないので、ちょっと長く見せたいなと思って、くるぶしの下までの長めのパンツ。現役の終盤には、ズボンの裾を上げてストッキングを露出させるクラシックスタイルの着こなしもしました。考えてみれば、ストッキングの変遷というのはすべて、制覇していますね(笑)。

 入団当初は、まずソックスを履いて、その上にストッキングという二枚重ねが主流。ストッキングが見えてなければいけないという時代だったんです。当時はふくらはぎの下くらいにユニフォームのパンツの裾があって、そことスパイクを縦に一本の線でつなぐようなストッキングのラインを見せていました。

 90年代の初めには、ストッキングを履かずにソックスだけにしてパンツはくるぶしぐらいまで伸ばすようになりました。次に、パンツの長さがさらに伸びて、スパイクが隠れてしまうほどに。ソックスがまったく見えない。いまの主流がまさにそうですね。

 パンツのスソを下げてストッキングを見せなくしたのはファッション性を追求する気持ちも強かったですが、もう一つの理由はケガの防止です。たとえば自打球、キャッチャーで言うとレガースですべてが覆われているわけではないので、ファウルの打球の角度によっては、無防備な個所を襲うかもしれません。

 そうなったときに、ユニフォームがふくらはぎを覆っていたら、それがプラス1枚になる。ユニフォームはソックスよりも厚いので、その分だけクッション代わりにもなるんです。1枚だったら皮膚が切れていたところを、2枚あったがために切り傷にならずに済む可能性がある。そう思ってやっていました。

ヒザを曲げやすいクラシック型


 クラシックスタイルにしたのは、機能性を考えたからです。練習中にパンツの裾をヒザのすぐ下まで上げてソックス1枚だけで動いてみると、すごく動きやすかったんですよ。ソックス1枚というわけにはいかないので、ふくらはぎが全部覆われるようなストッキングをソックスの上に履いたわけです。

 クラシックスタイルの動きやすさというのを具体的に説明しましょう。僕はキャッチャーだったので、ゲームの中で何度も立ったり座ったりします。しゃがんでヒザを曲げたときに、長いパンツだと、裾が足の裏に少し引っかかったりすると、ヒザの付近の生地が突っ張って、曲げにくくなってしまう。クラシックスタイルにはそういうストレスがありません。

 あとは、そのスタイルにすると少しでも足が速そうに見えるかもしれない。巨人阿部慎之助もクラシックスタイルにして長いですが、彼の場合は足を速く見せたいというより、ヒザを曲げやすいというキャッチャーとしての性がそうさせたんだと思います。

 4つの時代のストッキングを経験した人はなかなかいないんじゃないですか。4つの中でどれが一番好きだったかと言うと、いまにして思うのは、くるぶしの下あたりまでのモデルがバランスとしてはよかったのではないかと思います。見た目も機能的にも。裾をスパイクの中に入れると、どうしてもヒザが突っ張るんです。ですから感覚的にヒザを曲げたときには上がってきて、ヒザを伸ばしたときにはスーッと下りてくる、長すぎず短すぎずのパンツがよかったということです。

写真=BBM

●谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)
1970年生まれ。江の川高校(現・石見智翠館)にて甲子園に出場し、卒業後、ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。98年にはベストナイン、ゴールデン・グラブ賞、最優秀バッテリー賞を獲得しチームの日本一に大きく貢献。2002年に中日ドラゴンズに移籍。2006年WBC日本代表に選出され、2013年2000本安打を達成。2014年シーズンから選手兼監督になり、2016年現役引退を表明。通算3021試合出場、27シーズン連続安打、同本塁打を達成(いずれもNPB歴代最高)。2016年に中日ドラゴンズを退任後は、各種メディアで評論家、解説者として活動を行う。著書に『谷繁流キャッチャー思考』(日本文芸社)。
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