大興奮だった高橋由
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は6月1日だ。
前年の2002年就任1年目で優勝、日本一を手にした
巨人・
原辰徳監督。しかしながらオフにFAで
松井秀喜が抜けた03年は序盤から
阪神が走り、なんとか2位につけるも徐々に差は開いていた。
直接対決となった5月30日からの東京ドーム3連戦前にすでに8ゲーム差。展開次第ではセの灯が消えるとまで言われた。巨人は初戦こそ阪神先発の
ムーアを攻略し、8対2で快勝も、翌31日の試合は8回裏に
高橋由伸の2点二塁打で勝ち越しながら、9回表に屈辱の11失点。5対13という信じられないような敗戦となった。
迎えた6月1日の試合も9回表を終わって2対3と阪神にリードを許し、マウンドにはウィリアムス。負けたら9ゲーム差の巨人にとっては、まさに絶体絶命のピンチだった。しかし、ここで四番がそれにふさわしい仕事をした。またも高橋由だ。
腰痛に耐えながら出場を続けてきた高橋由は、ウィリアムスのスライダーをすくい上げ、劇的なサヨナラ2ラン。高橋由は両手を大きく上げてほえた。
「ガムシャラに向かっていきました。あとの打者もいるんで三振でもいいやと思っていました。勝負はこれからです」
珍しく興奮した口調だった高橋由。原監督も「いいゲームだった。決める人が決めたからね。乗っていかないといけませんね」と笑顔を見せた。同年、終わってみれば阪神独走Vで巨人は3位。原監督はフロントとの確執もあって早々に退任となった。
最後、蛇足。
週べ編集部は高橋由を慶大時代から何度も取材してきた。少し照れ屋だが、ヒザとヒザをつき合わせて話すと、意外ときさくで、しかも熱血野球小僧。02年限りで松井がチームを去った後、キャンプで高橋のインタビューをした際、こんなタイトルをつけた。
「ワイルドでいこう!」
松井の後継者的な見方があったが、気にせず、自分らしさを出してほしいというメッセージだった。
指揮官・高橋由伸にも同じ言葉を送りたい。
写真=BBM