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プロ野球年代別オールスター

メジャー・リーグが近づいた「1990年代」/年代別オールスター

 

優勝への貢献度、それを凌駕する実績、そしてインパクトを踏まえて、プロ野球の全選手を主に活躍した年代ごとにセレクト。超豪華オールスターをお届けする。

海を渡った名選手たち



 ドラフトで8球団が競合し、交渉権を獲得した近鉄へ入団した野茂英雄が“トルネード投法”で旋風を巻き起こした一方で、そのパ・リーグを制した西武は日本シリーズで両リーグ史上最速で優勝を決めた巨人と激突、“盟主決戦”を無傷の4連勝。たびたび脅かされながらも長くプロ野球界の中心に座り続けた巨人が、その座を明け渡したと言えるのが1990年だった。

 セ・リーグでは野村克也監督の“ID野球”でヤクルトが台頭、巨人も長嶋茂雄監督が復帰して、94年には史上初となる中日との最終戦同率優勝決定戦を制し、その勢いでパ・リーグ5連覇の西武も撃破する。その巨人で初の全試合出場を果たしたのが“ゴジラ”松井秀喜。一方のパ・リーグで、プロ野球で初めてシーズン200安打に到達したのがイチローだった。そのオフには野茂が海を渡り、“トルネード”はメジャーをも席捲する。“盟主”は意味を失い、従来の価値観を覆すような新しいタイプのスターが次々に現れたのが、この90年代と言えるだろう。

【1990年代オールスター】
先発 野茂英雄(近鉄)

中継ぎ 藤井将雄(ダイエー)

抑え 佐々木主浩(横浜)

捕手 古田敦也(ヤクルト)

一塁手 清原和博(西武ほか)

二塁手 小久保裕紀(ダイエー)

三塁手 江藤智広島

遊撃手 松井稼頭央(西武)

外野手 秋山幸二(ダイエーほか)
    松井秀喜(巨人)
    イチロー(オリックス)

指名打者 デストラーデ(西武)

 エースの野茂だが、優勝への貢献度はゼロ。90年のセ・リーグMVPとなった斎藤雅樹、“10.8”の力投も印象に残る桑田真澄、その94年に“最後の完全試合”を達成した槙原寛己ら、巨人の“三本柱”が貢献度では分がある。左腕では2チームで優勝に貢献した工藤公康(西武ほか)が筆頭。その西武には郭泰源石井丈裕西口文也らMVPを受賞した投手が並ぶ。

 スターターでは50歳まで投げ続けた山本昌(山本昌広。中日)が3度の最多勝。中日には同じく左腕の今中慎二、99年MVPの野口茂樹もいる。日米で奪三振の山を築いた石井一久(ヤクルト)も左腕だ。91年MVPとなった右腕の佐々岡真司(広島)はクローザーとしても計算できる。

 中継ぎにはダイエー初優勝に貢献して“炎の中継ぎ投手”と呼ばれた藤井将雄を据えた。リリーフ投手トリオの先駆けともなった“サンフレッチェ”から潮崎哲也(西武)と杉山賢人(西武ほか)もいて、パ・リーグ勢の救援トリオでゲーム後半を支配する。

 クローザーでは赤堀元之大塚晶文らの近鉄勢も印象に残るが、絶対的クローザーとしてのインパクトではセ・リーグに軍配。高津臣吾(ヤクルト)や宣銅烈(中日)以上の存在感を放ったのが98年に横浜38年ぶり日本一の立役者となってMVPに輝いた“大魔神”佐々木主浩で、横浜には先発に左腕の野村弘樹(弘)、右腕の斎藤隆三浦大輔ら、セットアッパーにも“ヒゲ魔神”五十嵐英樹らが固定され、多くの好投手が群を抜く安定感で立ちはだかる佐々木へとバトンを回していった。

 司令塔は“ID野球の申し子”古田敦也。野茂とはソウル五輪でバッテリーを組んだこともある。2000年代の印象も強い谷繁元信(横浜)は唯一のベストナインが98年で、佐々木が登板したときの“救援捕手”でもおもしろいだろう。ただ、優勝への貢献度で圧倒するのが伊東勤(西武)。先発が古田、中継ぎが伊東、抑えが谷繁という“捕手リレー”もオールスターらしいと言えそうだ。

好打者が控える盤石の打線


西武・デストラーデ


 打線は当時の長嶋巨人をしのぐ重量打線となった。捕手の古田も含めて四番も任せられる強打者がズラリ。外野にいる松井秀喜を筆頭に、西武の“AKD砲”からは秋山幸二が外野に、清原和博が一塁に、デストラーデが指名打者に。90年代に打撃タイトルが集中し、当時は二塁を多く守っていたのが小久保裕紀だ。

 三塁の江藤智は2度の本塁打王、95年は打撃2冠。安打製造機タイプは外野のイチローと遊撃の松井稼頭央のみだが、ともに長打も期待できる。三振も多かったが、長距離砲では一塁手の広沢克己(広澤克実ほか)や遊撃手の池山隆寛らヤクルト勢。四番打者タイプでは外野手の新庄剛志阪神)や一塁手の石井浩郎(近鉄)、一塁手では95年MVPのオマリー(ヤクルト)もいる。

 ただ、長距離砲を打線に並べることが常勝を意味しないことは90年代の巨人が証明している。横浜“マシンガン打線”には2度の首位打者となった外野手の鈴木尚典もいるが、ローズと石井琢朗を二遊間に並べるのもいい。二塁手では辻発彦(西武)や和田豊(阪神)ら、遊撃手では通算犠打の世界記録を樹立した川相昌弘(巨人)らの名手もいる。

 遊撃、二塁でゴールデン・グラブに輝き、00年代には三塁でも受賞した立浪和義(中日)は外野もこなし、攻守走すべてでハイレベル。遊撃には一番打者としてチームを引っ張った野村謙二郎、外野には打撃を徹底的に追い求めた前田智徳らの広島勢もいて、打線の充実ぶりでは他の年代に負けていない。むしろ、この巧打者たちを先発メンバーに並べて、長距離砲を代打の切り札として温存したほうが、相手投手にとっては厄介かもしれない。

 この90年代にキャリアの前半を過ごし、後半は海を渡ってメジャーで結果を残した名選手も多い。その実力を初めて世界で試すことができた時代の選手たちだ。それ以前の選手にとっては、どんなスター選手であっても、世界は夢に過ぎなかった。奇しくも、90年は平成2年。世界が夢で終わった昭和の名選手たちと、夢をかなえた平成の名選手たちとの激突には、ファンの夢もふくらみそうだ。

写真=BBM
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