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ヤクルトの中継ぎ左腕・中尾輝が選んだ言葉は「お母さん、ありがとう」

 

6月3日の楽天戦で今季5勝目をマークした中尾



 ヤクルトでは選手が節目の記録を達成したり、印象的な活躍をすると、完全受注生産の記念Tシャツを作ることが恒例となっている。今季は、勝利とともに激走で三塁打をマークしたブキャナンの「オトーサン、ガンバリマシタ!」Tシャツや、1試合5打数5安打の活躍を見せた廣岡大志の「大志を抱け!」Tシャツなどが登場した。

そして、4月8日の巨人戦(神宮)でうれしいプロ初勝利を挙げた中継ぎ左腕・中尾輝も、もちろん記念Tシャツを作ることに。そして本人が選んだ文言は「お母さん、ありがとう」だった。自筆の文字が胸部分に躍っている。

 愛知県の杜若高、名古屋経大を経て2017年ドラフト4位でヤクルトに入団した中尾。ドラフト指名以降、母・美恵さんの女手一つで育てられたというエピソードはたちまち有名になった。初勝利後、ウイニングボールを手にした中尾は「ずっと応援してくれているので。お店に持っていこうと思います」と語った。そのお店とは、美恵さんが名古屋市内で営む居酒屋『団』。ちょうど次のカードがナゴヤドームでの中日戦だったことから、記念ボールは本人の手により最短で届けられた。

 そのときの様子を中尾が後日、照れながら明かしてくれた。「はい、これボールだよ」(中尾)。「わあ、すごい!」(美恵さん)。本当はもっと感動的なシーンだったかもしれないが、本人が語ったのはここまで。そのウイニングボールはお店に飾られているという。

 そんな中尾は、今やスワローズの中継ぎ陣に欠かせぬ存在となった。6月3日の楽天戦(楽天生命パーク)では、チームトップタイとなる今季25試合目の登板を果たし、勝利投手に。これが自身5勝目となり、先発のブキャナンと並ぶチームトップタイの数字となった。次々と転がり込んでくる白星に、中尾は「先発の方に申し訳ない」と恐縮しきり。だがそれは、勝敗を左右する大事な場面を任されている証しでもある。

 2勝目以降のボールの行方も気になるところだが、本人によると「(自分で)ためています」とニヤリ。だが、形はなくとも「お母さん、ありがとう」の気持ちだけは勝つたびに、いや、投げるたびに名古屋のお店へ届いているはずだ。

文=富田 庸 写真=井沢雄一郎
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