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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

進化ではない。これがロッテ・荻野貴司の真価

 

リードオフマンとしてカモメ打線の火付け役となっている荻野貴



 鋭く、クルリと体を回転させると、驚くほどに短く握られたバットが面白いようにボールを弾き返していく。

 ロッテの斬り込み隊長・荻野貴司がふたたび上昇気流に乗った。5月31日のヤクルト戦(神宮)から6月6日の中日戦(ナゴヤドーム)までに放った安打数は順に2、2、4、2、3、2。6試合連続の複数安打だ。

 今季は開幕から7試合目まで打率4割超とロケットスタートを切ったが、徐々に失速。5月8日には打率.248まで数字を落としてしまった。そこからの鮮やかなV字回復だ。6月6日時点でリーグ4位の打率.312まで上昇させ、交流戦に限れば筒香嘉智DeNA)の.474に次ぐ.471をマークしている。

 開幕から1カ月の時点では自らの打撃を「本当にいいときもあれば、全然のときもあったり。ちょっと波がある」と分析していた。その言葉どおりのジェットコースターのような打率の推移だ。

「疲れはしますけど、そこを乗り越えていかなければならないので。やっぱり(1年間)フルで出たことがないので多少の不安はあります。毎日のケアとかを大事にやっていきたいと思います」

 そう話すように、アップダウンの理由のひとつは自らのフィジカルをまだ信じ切れていないことにあるのだろう。ベテランの域に差し掛かりつつある32歳の韋駄天は、8年間のプロ生活で数々のケガに見舞われてきた。昨季は大きなケガなく1年間を駆け抜けたが、不振による二軍生活もあって103試合の出場にとどまっている。それでも、キャリア最多の出場数だった。

 ルーキーイヤーからの3年間、バッティングの指導を受けていた金森栄治打撃コーチの復帰は打撃好調の追い風となった。軸回転を重視するその打撃理論は、「バットを短く持って、大振りすることなくコンパクトに、しっかり下半身を使って打つ」という荻野貴の打撃スタイルにピタリとはまるものだ。

 しかし、進化を遂げたわけではない。荻野貴自身も「1、2年目にしっかり教えてもらってきたことを再確認してやっているという感じなので。特に新しいことを始めたわけではなく、本当にあらためて確認しているという感じですね」と話す。

 53試合67安打2本塁打17打点14盗塁、打率.312。現在のこの数字こそが、荻野貴司の真価なのだ。開幕から46試合57安打1本塁打17打点25盗塁、打率.326という衝撃のデビューを飾ったルーキーイヤーの2010年を思えば、まだ物足りないほどだと言ってもいい。

 ある試合のテレビ解説で里崎智也氏がこう口にした。「力を発揮できるなら荻野と内(竜也)は侍ジャパンに名前を連ねても不思議ではないですからね」。2006年に侍ジャパンのWBC優勝に貢献し、荻野貴が入団した2010年にロッテを下克上・日本一に導いたかつての正捕手の言葉だ。

 やはりケガと隣り合わせの野球人生を歩んできた内についてはまたの機会に記したいが、6月6日時点でリーグ2位タイの12セーブ、セーブ数5傑の中ではトップのWHIP(1イニングあたり何人の走者を出したかを表す数値)1.01を記録していることはお伝えしておこう。

 隠れた侍クラスの2人が、これまで発揮できていなかった自らの真価を示している。荻野貴と内がシーズンの最後までケガと無縁のまま駆け抜けることができたならば、ロッテが混戦模様のパ・リーグをさらにかき乱す存在になっているはずだ。

文=杉浦多夢 写真=BBM

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