週刊ベースボールONLINE

編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

オリックス・西勇輝が“登場曲”に秘める思いとは

 

登場曲で気持ちはスイッチを入れるため、オリックス西勇輝は昨季途中から曲を変更した


 『心技体』と言われるように、自身のパフォーマンスを最大限に引き出すには、“心”のコントロールも必要だ。そんな心が透けて見えるのが表情である。喜怒哀楽を出す者や、飄々とポーカーフェイスを貫く者も。そんな中で、“笑顔”が代名詞となっているのが、オリックスの先発右腕・西勇輝だ。

 勝負の世界の中で、純粋に野球を楽しむ。苦難を乗り越えてきたからこそ、その思いは強いのだろう。プロ2年目には顔面麻痺を発症。4年連続2ケタ勝利を期した昨季は、右手首に打球を受けて骨折。決して順風満帆なプロ野球人生を送ってきたわけではない。

 試合中に涙を流したことだってある。ソフトバンクと優勝を争った2014年。シーズン終盤の9月16日の直接対決(京セラドーム)では、先発マウンドに上がるも、5回途中5失点でKO。ベンチに下がる右腕の目から涙がこぼれ落ちた。試合後、先輩の佐藤達也から「まだ終わってない。最後まで投げないといけない」と声もかけられた。

 だから、前を向くことを忘れない。数年前まで帽子のツバに『きっと大丈夫』の言葉を記し、ピンチを招けばセルフトークで自らを鼓舞する。ときに余裕を持ち、ときに心を奮い立たせ、打者に挑み続ける。

 そんな気持ちのコントロールはグラウンド外でも。とくに先発投手は週に1度の登板とあって、登板間の過ごし方、気の持ちようは次回登板の内容を左右する。ルーティンの1つである、自身の投球映像を確認する際に欠かさないのが音楽だ。

「常に聞いているんです。メロディーや歌詞で何かを感じますし、結果が出ないときは『オレ何やってるんやろう』と思わせてくれる。逆に気持ちが先走っているときは、落ち着かせてくれるんですよね」

 昨季途中から、マウンドに上がる際の『登場曲』も『Mr.Children』の『Tomorrow never knows』に変更。マウンド上で“西スマイル”を見せる右腕の“やんちゃ”なイメージとは反するが、「徐々に曲調が盛り上がっていく感じが、これから試合に入る感情と一致する」と変更を決めた。

『果てしない闇の向こうの手を伸ばそう』。そんな歌詞からも感じ取れる「カベ、困難を越えていく。自分自身もそうだから、そういう所も好きな曲」と、勝負の場に向かう1曲に選んだ。

 今季は初の開幕投手を務め、好投を続けるも、白星が伸び悩み、6月8日のヤクルト戦(神宮)では7回無失点で3勝目。約1カ月半ぶりの3勝目(6敗)を手にした。それでも、笑顔を見せ、決して悲観することはない。心から野球を楽しむために、自らの“心と”向き合い、決めたことを貫き通す強さも持つ。

「時には人の意見や相談も必要。だけど、結局は自分のこと。そう思うと悩むことなんてないんです」

 そんな背番号21の姿は、登場曲『Tomorrow never knows』の最後のワンフレーズがよく似合う。

『心のまま僕はゆくのさ、誰も知らない明日へ――』


文=鶴田成秀 写真=佐藤真一

関連情報

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング