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伊原春樹コラム

清原と違いメンタル面の強さを持っていたカブレラは真の四番だ/伊原春樹コラム

 

どこまでも前向きな選手


本塁打だけでなく、打率も残せる打者だったカブレラ


 言うまでもなく、四番は打線の核だ。監督もまずオーダーを思い描く際、四番を誰にするか考えるものだ。核がしっかりしていないと打線が機能しないし、勝利も遠のく。優勝を手に入れるためには最も重要なポジションの一つだろう。

 ただ、一概に四番と言えども、首脳陣、チームメートなどはもちろん、敵チームのファンからも「○○が打ったからしようがない」と思われるような圧倒的存在感を放つのが真の四番だ。それを得るには5年以上は成績を残さなければいけない。それも並の成績ではなく打率3割、30本塁打、100打点。これくらいの数字はコンスタントにたたき出さなければ真の四番とは言えない。

 思いつくままに、私がプロ入り前から見てきた中で真の四番と思う選手の名を挙げていこう。まず長嶋茂雄さん、王貞治さん(ともに巨人)。そして中西太さん(西鉄)、野村克也さん(南海ほか)、大杉勝男さん(東映ほか)、門田博光(南海ほか)、バース(阪神)、落合博満ロッテほか)、ブーマー(阪急)、清原和博西武ほか)、カブレラ(西武ほか)、松中信彦(ダイエーほか)、金本知憲(阪神ほか)、ラミレス(巨人ほか)といったあたりだろうか。

 その中でも監督、コーチと選手という関係で一緒に戦ってきて最も印象深いのが清原とカブレラだ。どちらも素晴らしいバッターであったが、私にとってはどちらかというとカブレラのほうが頼もしかった。若くして四番に座った清原は、若いころメンタル面で弱いところがあった。調子を崩し、思うような打撃ができないと森祇晶監督の下へ行き、「四番を外してください」とよく言っていたそうだ。森監督は「これまで打って助けてくれたこともたくさんあったじゃないか。悪いときもあるよ」と優しく声をかけ、精神面をサポート。清原もチーム愛を持っていた男だから、不調のときは余計に「俺が四番でいいのか」と思い悩んでしまっていたのだろう。

 自分が打てず、さらにチームが勝てないでいるときのプレッシャーは想像を絶するものだ。だからこそ、四番は強固なメンタルを持たなければいけないが、カブレラはそのあたりは抜群だった。どんな状況になっても、平気な顔をして「明日、明日」と気持ちを切り替える。どこまでも前向きな選手だった。

 私が西武監督時代の2002年、リーグ優勝を遂げたが、四番のカブレラは当時シーズンタイ記録となる55本塁打をマーク。一発長打だけではない。打率も.336とハイアベレージを記録した。これは清原もそうだが、カブレラはプルヒッターではない。決して強引なバッティングはせずにセンター方向を中心に打ち返す形を持っていた。だから、率を残せたし、どの方向にもホームランを打てたから本数も伸びた。

 さらに、真の四番に必須の勝負強さも兼ね備えていた。例えば当時はダイエーと優勝を争うことが多かったが、常に競ったゲーム展開で終盤を迎えていた。8、9回、カブレラが起死回生の本塁打を打ってくれることが多々あった。とにかく貴重な一打が非常に多かった印象だ。

 02年には、巨人との日本シリーズを戦い、チームは4連敗を喫したが、カブレラは打率.357、2本塁打と一人気を吐いた。四番は厳しいマークに遭うのに、それでも打席では普通の顔をしてシーズン中と変わらずに、鋭い打球を飛ばしていた。やはり、真の四番と言える存在だ。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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