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プロ野球仰天伝説

ノーヒットノーラン&3打席連続本塁打を記録した堀内恒夫/プロ野球仰天伝説176

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

9回のマウンドに向かう直前まで気づかず……



 8回裏の攻撃中、ベンチの雰囲気がおかしいことに堀内は気がついた。「ノーヒットノーラン」という言葉が耳に入った。それでも、「ヨソの球場でそんな記録が出たのか」と、気にも留めなかった。9回のマウンドに向かう直前、「そういえば俺も今日は打たれた記憶がないなあ……」と聞いてみると「なに言ってんだ、それはお前のことだよ!」。そのとき初めて、自分がしようとしていることに気がついた――。

 1967年10月10日。巨人はすでにV3を決めていた。広島とのダブルヘッダー第1試合は消化試合。巨人にとっては日本シリーズに向けての調整だった。立ち上がり、堀内の調子は良くなかった。2四球でピンチを招き、初回の投球数は27。観客も両軍ベンチも堀内自身も、大記録が出る予感すらなかった。

 一方の巨人打線は猛烈な勢いで広島に襲いかかる。1回に先制すると、2回には2ランの後、堀内が自ら左翼席中段に叩き込んだ。堀内の猛打ショーはここから始まる。

 4回の2打席目、左翼ポール際に打ち込んだ。注目は投手初の3打席連続本塁打なるか、である。誰もノーヒットノーランなど考えない。それぐらい堀内の球は荒れていた。3打席目は6回。当然のように左翼席へ打ち込んでしまった。7回の第4打席、さすがに一発はなかったが、中前に運んで4安打の固め打ち。こういう事情があったため、堀内は自分の快投に気づいていなかった。ただ、尻上がりに調子を上げていることには気づいていた。5回以降はすべて三者凡退。テンポが良くなると、守っている野手は「まだ打たれてない」と気づき始めたわけだ。

 ようやくもう一つの快挙に気づき、最終回のマウンドに向かった堀内。ベンチは静まり返るが、本人は大胆不敵。ニヤリと笑う。もうこうなるとこの男は手をつけられない。しかも3打席連発で気分は上々。すでにこの時点で広島がヒットを打てる可能性はきわめてゼロに近かっただろう。堀内とはそういう男だ。

 簡単に二死を取る。なんとか阻止しようと打席に立ったのは四番の藤井弘。すると堀内はボールを立て続けに3球。ベンチからは「歩かせてもいい」という指示が飛ぶ。が、「打たれる気がしなかった。歩かせようなんて思わなかったです」。

 3ボール2ストライク。藤井の打球は低い軌道で左翼手のグラブへ収まりゲームセット。打っては4安打、3本塁打、5打点、投げてはノーヒットノーランという大記録を、堀内はやってのけた。

写真=BBM
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