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【MLB】現代では難しいMLBとNFLの二刀流。今年のドラフト指名されたマレーの選択は?

 

その才能を買われアスレチックスに指名を受けたマレー。フットボールでも活躍し二刀流の道を歩むのか、それとも……



 MLBドラフトでアスレチックスが一巡(指名9番目)で、オクラホマ大のカイル・マレー外野手を指名した。マレーは9月から始まる学生アメリカンフットボールのシーズンで先発QBを務める予定だ。 

 NCAAのルールでは、大学フットボール選手がプロ野球チームと契約を結んでお金をもらっても、アマチュアとしてのステータスは維持できる。フットボールは球技の中でも特にケガのリスクが高い種目だ。マレーのように両方できる選手は、仮にフットボールの方が好きだったとしても、プロ野球から先に高い契約金を提示されると断りにくくなる。大学としては花形選手に逃げられたくないため、こういった特別ルールを設けている。

 2014年2月シアトル・シーホークスでスーパーボウル王者の栄冠に輝いたQBラッセル・ウイルソンはこのルールの恩恵にあずかった。大学在学中の10年6月にロッキーズから4巡指名、10、11年、野球シーズンはロッキーズ傘下のマイナーでプレーして、秋はカレッジフットボールでQBとして活躍した。 

 QBとして腕を上げたことで、12年4月シーホークスから3巡指名を受け、プロQBに重点を置くようになる。いくら潜在能力の高いアスリートでも、プロでどのスポーツで成功できるかはすぐには分かりにくい。こうして両方の可能性を追えるようにしてあげるのである。

 今回の場合、アスレチックスにしてみれば、この秋のケガが心配だが、同球団のエリック久保田スカウト部長は「彼の野球での伸びシロを考えれば、ケガのリスクもいとわなかった。この秋は私たちもオクラホマ大を応援する」とコメントしている。

 アスレチックスとマレーは7月13日までに条件面で合意しなければならない。ドラフト一巡9番目の契約金は、今年の場合476万ドルが目安で、仮に即野球専念ならその金額に近いものをもらえるが、フットボールをプレーするリスクを考慮すれば、多少値切られるだろう。

 ちなみに野球選手としてはパワーとスピードを兼ね備え、高校時代は遊撃手、大学ではセンター。アンドリュー・マカッチェンのような選手にと期待される。フットボールについては、走ってよし、投げてよしのQBで、テキサス州の高校時代は3年連続州チャンピオンに輝き、先発した試合は42勝0敗と無敵だった。

 しかしながら身長が180センチ以下なので、NFLではQBとして難しいと見られている。もっともこの秋のプレー次第ではNFLのスカウトの評価を変えられるかもしれない。ちなみに80年代後半から90年代前半にかけては、ボー・ジャクソン、ディオン・サンダースらがNFLとMLBの二刀流に成功し人気者になった。だが最近では上記のようなマイナー野球と大学フットボールの二刀流はあっても、最高峰のレベルでは見かけない。

 先日、テレビのインタビューでボー・ジャクソン自身が二刀流は難しいと話していた。「自分のプレーしていたころと違い、タレントレベルが高くなり層も厚い。若い選手に余計なことは言いたくないがどちらを選んだにしても一つに絞ったほうがいい」。そうして考えると大谷翔平は大したものなのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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