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林昌範コラム

巨人・阿部選手との対戦は不思議な感覚 「移籍組」が古巣と対戦時に抱く特別な感情とは/林昌範コラム

 

ワクワク感と不安な感情


2004年、巨人時代の林昌範(左)、阿部慎之助(写真=BBM)


 交流戦も終わりに近づいてきました。ヤクルトが球団初の最高勝率球団となるなど、今年もファンの皆さんは楽しめたと思います。僕が注目していたのは違うリーグの球団に移籍して古巣と対戦した選手たちです。中日松坂大輔投手、西武榎田大樹投手、ヤクルト・田代将太郎選手などはいろんな感情が入り混じった中でプレーしたのではないかなと思って見ていました。

 僕自身も巨人、日本ハムDeNAでプレーさせていただきましたが、違うリーグに移籍すると古巣と対戦することが少なくなります。交流戦で投げるときはワクワク感と同時に、自分の手の内を知り尽くされている不安な気持ちと特別な感情で球場に向かったのを今でも思い出します。

 09年にトレードで日本ハムに移籍したとき、交流戦の巨人戦で阿部慎之助選手と対戦したときは本当に不思議な感覚でした。今までは自分がマウンドにいたときにキャッチャーマスクをかぶっていた人が打席に立っている。なかなか伝わりづらいかもしれませんが、自分の中でまったく想像をしていないシチュエーションでした。

 巨人在籍時は阿部さんに情けない投球をして怒られたりしたこともありますが、チームの勝利のため、抑えるために一緒に考えていただき、苦しい投球をしているときも常に言葉や構えで自分を引っ張ってくれました。その野球界の恩人と対戦したとき、「今は自分の敵なんだ」とマウンドで思ったことを今でも覚えています。

 きっと僕だけでなく、移籍した選手ならこの不思議な感覚があるのではないかなと思います。もちろん時間が経てばそのような気持ちも薄くなるのですが、移籍1年目は特別な感情で古巣の球団と対戦するのではないでしょうか。

 移籍先だけでなく、古巣のファンの方から温かい拍手をもらうと選手は本当にうれしい気持ちになります。今年の交流戦で西武の榎田投手が阪神戦で白星を挙げたときに、阪神ファンも称えていましたが、とても素晴らしい光景だなと思いました。違うリーグへ移籍しても交流戦で頑張っている選手を見られます。選手は新天地で活躍することが応援してくれた人の恩返しにもなるので頑張ってほしいですね。

記事提供=ココカラネクスト編集部 平尾類
ココカラネクスト編集部

元DeNA・林昌範氏(写真=ココカラネクスト編集部)


●林昌範(はやし・まさのり)
1983年9月19日、千葉県船橋市生まれの34歳。市立船橋高から2002年ドラフト7巡目で巨人入団。06年には自身最多の62試合に登板するなど主に救援で活躍。08年オフにトレードで日本ハムへ移籍した。11年に退団し、12年からDeNAに加入。昨オフに戦力外通告を受けて現役引退した。通算成績は421試合で22勝26敗22セーブ99ホールド、防御率3.49。186センチ、80キロ。左投左打。家族はフリーアナウンサーの京子夫人と1男1女。
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