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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

守護神の条件である「1球への強い思い入れ」を持っていた右腕

 

西武時代、守護神を務めていた豊田


 西武に新守護神が誕生した。一昨年、昨年と28セーブをマークしてチームを勝利に導いてきた増田達至が今季、失点を重ね苦しいピッチング。そこで首脳陣が白羽の矢を立てたのが先発で5勝を挙げていた新外国人のカスティーヨだ。もともとリリーフ経験もあり、本人も自信に満ちた表情を見せている。

 西武でシーズン中に先発から守護神への配置転換で思い出されるのは2001年の豊田清(現巨人投手コーチ)だろう。松坂大輔西口文也石井貴に続く4番手の先発要員だった豊田。だが、開幕早々にチームは森慎二が右肩痛を訴え、守護神を失う苦境に立たされていた。

 新守護神として東尾修監督が抜擢したのが豊田だった。当時、豊田は9年目の30歳。右ヒジを痛めた経験があり、130キロ台後半のストレートとカーブを軸に試合を作ってきた投手だった。投手コーチから守護神転向を打診されたときの心境をこう語っていた。

「過去にヒジの手術を経験して、前年も登板間隔をあけながら投げていたくらいですから、できるわけがない、と。確かに前年の後半から球が速くなっていたんですけど、それは本来の自分のピッチングじゃなかったです。結果として球は速いけど、自分の球じゃない。だから、キャンプから自分の体に合った、遅いけど、キレのある球しか練習していなかったんです」

 首脳陣からの案をすんなりと受け入れられず、即答できなかった豊田だったが、覚悟を決めたのは東尾監督からの次の言葉だった。

「1球への思い入れが強い。だから選んだんだ」

 ナインのすべての思いを背負い、少しのミスも許されない極限状態でマウンドに上がる守護神。だから、責任感の薄い選手には任せられない場所なのだろう。東尾監督の眼力はさすがだった。この年、28セーブを挙げると、02、03年は38セーブで2年連続最優秀救援投手に輝いた。特に優勝した02年は防御率も0.78とほぼ完ぺきなピッチングに終始した。

 果たして、カスティーヨに「1球への強い思い」はあるのか。6月22日、24のロッテ戦(QVCマリン)、守護神としてマウンドに上がった背番号47。それぞれ1回1失点だったが、今後どのようなピッチング、そしてマウンドで立ち居振る舞いを見せてくれるか。いずれにせよ、10年ぶりの優勝へ、その右腕がカギを握っていることは間違いない。

文=小林光男 写真=BBM
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