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早実・野村大樹に「安田尚憲の再来」の予感

 

名門・早実において、1年夏から不動の四番を務める野村。チームの勝利に撤するその先には、侍ジャパンU-18代表の道が続いていくはずだ


 日本高等学校野球連盟は6月20日「第12回BFA U-18アジア野球選手権大会」(9月3日から9日まで、宮崎市)に出場する侍ジャパンU-18代表の第1次候補選手30人を発表した。

 今回のリストを見て、真っ先に「安田の再来」を予感した。その理由は、後述する。

 ちょうど1年前のこと。リリースされてきたU-18代表第一次候補選手を見て思わず、目を疑った。再度、確認したがやはり「履正社高・安田尚憲」の名前はなかった。東の怪物・清宮幸太郎(早実)は入っていたが、同じ左の長距離砲でライバル関係にあった西の怪物が、名簿から外れていたのである。

 本人は心中、穏やかでなかったに違いない。しかし、この結果を冷静に受け止めた安田は、自身の感情、個人の欲は心の奥底に秘め、とにかくチームのためにバットを振り続けた。準優勝を遂げた春のセンバツに続く甲子園出場は逃したが、夏の府大会でのアピールが実り、最終メンバーに食い込んだ。

 そして、銅メダルを獲得したW杯(カナダ)では不動のクリーンアップとして活躍。一度は味わった「選考漏れ」が、安田を野球人として、心身とも一回り成長する結果となった。

 そこで、今年も気になる逸材がいる。早実・野村大樹(3年)だ。昨年の侍ジャパンU-18代表では一、二番コンビを組んだ大阪桐蔭高・藤原恭大、報徳学園高・小園海斗が2年生で代表入り。この2人以外にも、ある選考委員は「2年生には、楽しみな選手がいた」と、明かしてくれた。名門・早実で1年夏から1学年先輩の三番・清宮の後を打つ四番・野村が、その「枠」にいたことは間違いない。

 昨秋からは主将。今春の都大会では「どうせやるなら、一番になりたい」と、チームの勝利が最優先ながらも、同世代を意識する発言が聞かれた。すでに高校通算本塁打は6月16日の西東京大会抽選会の時点で60本を超え、早大進学が有力視される中でも、NPBスカウト注目のスラッガーに成長している。

 大阪福島シニアに在籍した中学3年時には、小園らとともに侍ジャパンU-15代表に名を連ね、四番を担った。下のカテゴリーでプレーしたプライド、日の丸への思いも強い。そんなキャリア十分の野村が6月20日に発表された、第一次候補の30人リストから外れた。取り決めとして「選考理由」は説明されない。ただ、これが最終ではなく途中経過で、夏次第でチャンスは十分に残されている。

 6月に入り、野村は捕手から昨年4月まで守った三塁に戻った。決して本人は弱音を吐かないが、捕手出身の早実・和泉実監督の配慮である。投手をリードしていく負担は、想像以上。しかも、主将の大役。2年生捕手が台頭してきた追い風もあり、打席に専念してもらいたいとの「親心」が背景にあった。

 野村の持ち味は豪快かつ、柔軟性のあるバッティング。目の前の試合に、より集中できる環境が整った。プレーにとどまらず、圧倒的なリーダーシップも兼ね備える。短期間の中で、チームを一つに結束させていく侍ジャパンU-18代表には、必要な人材であると思う。

 3年ぶりの夏の甲子園を目指す戦いは間もなく、幕を開ける。「一戦必勝」が、早実の永遠のテーマ。全力プレーを貫くその先に、野村が「安田の再来」になるのではないかと、密かに期待を抱いている。春、夏の全国大会不出場組も選考対象となる最終メンバー18人は、夏の甲子園期間中に発表される。

文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし
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