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谷繁元信コラム

「権藤さんはチームを“ブラック企業”にさせなかった」/谷繁元信コラム

 

『ベースボールマガジン』で連載している谷繁元信氏のコラム「仮面の告白」。ネット裏からの視点を通して、プロ野球の魅力を広く深く伝えている同氏だが、今回はリリーフに関して、だ。

中継ぎにローテーション制


中日時代は4度、ユニフォームのデザインが変わった


 近代野球を考えると、7〜9の3イニングはすごく大事です。1998年に優勝したときの横浜(現DeNA)も、2000年代にドラゴンズが勝っていたときも後ろがしっかりしていました。

 もちろん、絶対的な守護神がいるのが大前提。その安心感が中継ぎ投手の潜在能力を引き出しますし、大きいのは9回を考えなくていいわけですよ。ベイスターズのときには佐々木主浩さんがいた上で、そこへつなぐ中継ぎ陣に権藤博さん(監督)はローテーション制を導入しました。

 基本的に3連投はさせていないと思います。2日投げたら、翌日は絶対に休み。チームを“ブラック企業”にさせなかったんです。しかも、勝ちゲームで使える中継ぎを二手に分けていた。右なら五十嵐英樹島田直也がいて、左は阿波野秀幸さん、森中聖雄など。そこでローテーションを組みながら、同じ日に五十嵐と島田を行かせないようにしていました。そうして万全の備えをした上で、先発が7回まで行ってくれれば楽なゲーム展開になります。極端にいえば、8回に3人でも突っ込めるわけですから。

 もうひとつ、ロング(リリーバー)の存在がすごく大事だと僕は思っています。先発が早い回で崩れたときには2〜3イニングをカバー。先発が6、7回を投げれば、後ろに回れる。横浜では具体的に誰というより、状態によって変わっていったと思います。そこに経験を積んだロングがいると、ベンチにとっても心強い。例えば4、5回でゲームが壊れかねない競った展開になったとします。こういうときに信頼がおけるロングがいると、勝負をかけて代打を出そうという判断ができるんです。

 まあ、権藤さんは監督時代に「俺はピッチングコーチだ」と言っていましたし、投手陣のやりくりはさすがというしかありません。

 やはり優勝するためにはリリーフ陣が安定するかどうかだと思います。投げてみないと分からないということではなく、後ろが安定し始めたチームが少しずつ勝ち星を増やしていくのではないか、そんな気がします。

写真=BBM

●谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)
1970年生まれ。江の川高校(現・石見智翠館)にて甲子園に出場し、卒業後、ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。98年にはベストナイン、ゴールデングラブ賞、最優秀バッテリー賞を獲得しチームの日本一に大きく貢献。2002年に中日ドラゴンズに移籍。2006年WBC日本代表に選出され、2013年2000本安打を達成。2014年シーズンから選手兼監督になり、2016年現役引退を表明。通算3021試合出場、27シーズン連続安打、同本塁打を達成(いずれもNPB歴代最高)。2016年に中日ドラゴンズを退任後は、各種メディアで評論家、解説者として活動を行う。著書に『谷繁流キャッチャー思考』(日本文芸社)。
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